DNAバーコード計画

 

DNAバーコード計画とは

     生物種が異なれば、その生物の持っている遺伝情報、すなわち遺伝子DNAの4種類の塩基(A,T,G,Cと略される)の並び方が異なります。従って、特定の遺伝子に着目してその塩基配列(DNAバーコードとよばれる)を分析すれば、その生物種を特定することが可能になる。動物ではCO1とよばれるミトコンドリアの遺伝子、植物ではmatK、rbcLとよばれる葉緑体の遺伝子を利用して、DNAバーコードのデータベースを作製しようというのが、DNA バーコード計画です。DNAの塩基配列を4色カラーで表示したものがバーコードに似ているのでこのように呼ばれますが、各種生物の特定の遺伝子の塩基配列のことです。カナダのP. Hebert博士が提唱し、世界的ネットワーク(iBOL)が作られ、全生物のDNAバーコードデータベースを作製計画が進められています。2015年までの目標は50万種です。分類学的だけでなく、環境保全、疫学、そして経済に様々な利益をもたらすことが期待されています。


         2015年までの目標           種数        

WG1.1   脊椎動物                   30,000

WG1.2   陸上植物                 100,000

WG1.3   菌類                          10,000

WG1.4   伝染病媒介昆虫等      10,000

WG1.5   農業害虫類                25,000

WG1.6   受粉媒介者                50,000

WG1.7   水辺の生き物等          25,000

WG1.8   海洋生物                 100,000

WG1.9   昆虫類                    100,000

WG1.10  極棲生物                 20,000 


DNAバーコードの取得方法

試料収集

    野外でサンプルを収集します。

    収集し他サンプルを専門家が種を同定します。

 

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DNA抽出

    数ミリグラムのサンプルを取り、細片にします。

    

メスを用いてサンプルを細切しているところ

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タンパク質分解酵素と一緒に小さな試験管に入れて、しばらく加温してタンパク質を消化する。


サンプルを消化中

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DNA抽出とDNA増幅(PCR)

DNA抽出キットを用いて、DNAを抽出する。

抽出したDNAをもとに、目的とするDNA断片をPCR法により増やす。

DNAが増えていることを電気泳動法により、確かめる。


    
   
   
左写真)右手前がDNA増幅装置(PCR装置)、左にあるのはゲル撮影装置  

  中写真)DNAを右から左向きに電気泳動中、青色は目印色素

  右写真)電気泳動の結果右側の7サンプルでDNAが増幅されている。

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塩基配列分析

DNAに蛍光で目印をつける反応を行い、DNA塩基配列分析装置で分析する。


DNA塩基配列分析装置   

得られたDNA塩基配列を示す波形

ATGCの4種の塩基を色分けしたもの


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DNAデータベースに登録

DNAの塩基配列から種を決めようとする場合は、BOLDシステムのデータベースと照合する。


 

















































DNAバーコードの例

     よく似た葉をもつ植物でも、DNAを調べることにより、種を同定できるだけでなく、お互いにどれとどれが近縁種かということもわかる。

     木曽五木のうち葉の形のよく似たの4種の樹木のDNAバーコード(matK)を調べてみました。

   

 アスナロはヒノキよりもネズコにちかいのでしょうか。


アスナロは、なかなかヒノキになれないかもしれない。

  

     DNA分析により、植物の分類も見直しが行われている。

形態学的は双子葉植物から単子葉植物が進化したと考えられていましたが、多くの植物の遺伝子DNAが解析されて、単子葉植物が現れる以前にもモクレンのような原始的な双子葉植物があらわれたと考えられるようになってきました。


     東山総合公園の動植物バーコード

動植物園では、動植物そのもの、あるいはその生態への理解を深めていただくために様々な動植物を展示し ています。展示されている動植物について、種名や生息地だけでなく、
遺伝子のレベルでも確認しておくことは、動植物園としては重要なことです。動植物園と 協力して資料を収集するとともにDNA塩基配列を調べています。また、近縁種が数多く保存されている動植物種では、それらの遺伝的類縁関係についても明らかになってくることも期待されています。

    

    動物  : 試料収集中 30点 (30種 2012.3)

    メダカ類: 試料収集中 75点 (67種 2012.3)

    植物  : 試料収集中 314点(291種 2012.3)

 

     日本産貝類バ-コード  Mollusk Barcode of Life

日本産の貝類のバーコードデータベースの構築を目指していますが。東海地方の陸生、淡水産の貝を中心にバーコードの収集、分析を開始しました。

    貝類 805点(213種)2012.2

 

      コメツキムシ

名古屋大学の大場先生との共同研究です。

 

      ゾウムシ   (133検体  68種:2012.02)

  コクゾウムシの類は、クチ(口吻)が長いのでその形から「ゾウムシ」と呼ばれます。種々の植物に対応していろいろなゾウムシがおり、環境の豊かさの指標になります。名古屋市内だけでも100種を越えるゾウムシが見つかっておいます。体長数mmと小型のものが多く、よく似ていているので種類を決めることがなかなか難しい。

以下は、9種類のゾウムシを分析した例です。



 

 









     なごや生きもの調査

名古屋市生物多様性センターが行っているため池調査で確認された生物について、協力しながら必要に応じてDNAバーコードによる調査を行います。


      Tokai Hilly land Barcode of Life & Wetland Barcode of Life

東海丘陵要素植物群のような東海地方固有の植物を中心にDNAバーコードを収集しています。