物質の構造や性質を調べるとき、対象とされる物質から放射される 光(電磁波)や、これに吸収される光を測定、解析する手法が もっとも広く用いられる。 現代の自然科学の発展の多くの分野は、光を測定する技術の進歩や、 それに基づく科学的発見によりもたらされてと言っても過言ではない。 これに関連する基礎科学の分野としては、物質の構造や性質を光の エネルギーレベルで調べる分光化学、無機的な分子集合体電子レベルで 調べる錯体化学、リモートセンシングの手法を用い極限状態にある 物質を調べる宇宙化学などがある。 本研究分野では、このような基礎科学を基にして、1) 物質を構成する 分子の微細構造や状態の解明、2) 機能性錯体の機能発現機構の解明、 3) 宇宙空間物質の解析による天体構造の解明などを主要テーマとし、 さきに述べた測光学・分光学等の手法を用いて研究する。 このような研究を通して物質に関する知識を深め、また分光や 測光技術を開発し、基礎的な分野で社会に貢献するとともに、 応用科学の発展を促すことを目指す。
近年、化石燃料使用の増大による地球環境の悪化から、クリーンで 再生可能な太陽エネルギーの利用が緊急の課題となっている。 太陽光エネルギーの利用を持ち出すまでもなく、光合成、光電池、 光通信等、光と物質の相互作用は日常生活と密接なかかわりを持ち、 我々の生活を豊かにしている。 光物質科学分野では、応用面を視野におきつつ、光エネルギー変換に 利用される色素、生体関連物質等の電子状態とその機能発現に関連する 研究を主に行う。 個々の分子の電子構造と機能の解明を基礎として、エネルギー移動、 電荷移動等の分子内と分子間相互作用、および光エネルギー等の 外的作用によるこれらの動的挙動を、分光学的方法を主体に様々な 手段を駆使して解明する。 これらの研究は、1) 太陽光エネルギーを利用した水分解による水素 エネルギーの創出、2) 光増感色素の一重項酸素生成による生体細胞の 破壊、3) 一重項酸素による癌腫瘍の治療、等に密接に関連し、 基礎的研究の成果が直接応用面の発展に寄与できる特徴がある。
私達が日常使っているものは主として、ガラス、プラスチック、金属と いった基本的物質から造られている。 最近ではこれらの日常品の機能を担う基本的部分に半導体、表示盤に 液晶、情報の記録に磁性体薄膜といった新物質が使われ我々の日常生活を 豊かにしつつある。 さらに超電導物質などの新しい物質の出現は私達の未来に夢を 持たせてくれている。 これらの物質はすべて、原子、分子および電子という基本的な粒子の 集団により構成されている。 原子、分子、電子といった基本粒子の集団中での協力関係を、 物理学や化学さらに計算機実験を駆使し、理論的に解明するのが 物性理論である。 分子からできている分子性結晶(この特殊な存在形態が液晶)、金属 薄膜を積み重ねた人工格子、また、最近比較的高温(-200℃程度)で 超電導状態が実現できることで話題の新物質である高温超電導物質の 理論的解明を目指す。