開催報告(第2回)

必要なものを、必要なときに、必要なだけ
〜 生命システムの巧妙な情報利用 〜

講師 : 田上 英明
日時 : 2006年7月21日
会場 : シアトルエスプレスカフェ (らくだ書店本店内:千種区青柳町)

2回目のサイエンスカフェは、1回目と同じく、らくだ書店2F・シアトルエスプレスカフェに於いて7月21日(金)に開催され、29名の市民が参加されました。

今回は、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ 〜生命システムの巧妙な情報利用〜」というタイトルで、システム自然科学研究科助教授・田上英明氏が生命現象の基本的な営みを分子生物学的に解説されました。

生命の特徴を、子供部屋の例から「部屋が乱雑にならないように秩序を保つこと」にあるという話題から始まり、昨今よく使われる、ゲノムという言葉の語源や概念の解説、大腸菌からハエ、ヒトに至るゲノムの大きさの比較や遺伝子数の比較へと話が進みました。 また、サケのDNA溶液のエタノール沈殿が各テーブルに回覧され、DNAを間近に観察することもできました。

続いて、セントラルドグマの解説からオペロンの語源や概念の解説に移り、大腸菌のラクトースオペロン制御の解説や、最近の研究から教科書にも誤りがあるという話題の紹介の後、「考えてみましょう」という時間が設けられ、テーブル毎の話し合いが行われました。 なぜ、ラクトースによる誘導がかかっていないときにオペロンの発現がゼロではないのか? なぜ、ブドウ糖があるとガラクトシダーゼが増えないのか? など、テーブル毎の話し合いには、生物学を専門とする同研究科・加藤・湯川・谷本の3氏も加わり疑問点の解決や発展的な話題などで理解を深めました。

後半は、一卵性双生児の例を挙げて、エピジェネティックスすなわち、DNAが同じでも形質が異なる「DNAを越えた遺伝現象」、染色体レベルの制御やDNAの塩基配列情報の変化を伴わない形質変化の話題に移り、三毛猫の例について、性染色体上の遺伝子発現の制御などの例について、染色体レベルの高次の遺伝子発現制御が高等生物の遺伝子制御に重要な働きをしているという、田上氏が最近取り組んでいる話題も紹介されました。

終盤の質疑応答では、DNAや染色体レベルの改変より、直接タンパク質を食べれば良いのではないかという率直な質問などが出され、BSE問題、医療、クローンなど各テーブルで活発な意見交換がされ、予定通り20:00に閉会しました。

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