開催報告(第3回)

原子、分子、そうして固体の中の電子について

講師 : 舘脇 洋
日時 : 2006年8月18日
会場 : シアトルエスプレスカフェ (らくだ書店本店内:千種区青柳町)

3回目のサイエンスカフェが、前2回と同じく、らくだ書店2F・シアトルエスプレスカフェに於いて8月18日(金)に、立ち見の方も出るほどの盛況のうちに開催されました。

題目は「原子、分子、固体の電子状態」で、システム自然科学研究科の舘脇洋教授が量子力学の黎明期の話題から現在の最先端の問題までを豊富な図、式を使って解説されました。

溶鉱炉を黒体とみなし、その熱輻射の特性を調べることによりプランクの定数が出てくるところより話が始まりました。次に光と電子の粒子性、波動性、それらを基に量子力学的波動関数の導出へと進みました。これらは大学で物理や化学を学んだ者なら一度は聞いた話なのですが、興味深かったのは理論を開拓した先人たちが、どのようなところで過去のしがらみを離れ、物事を単純化し論理を飛躍させ現象の本質に迫ったかという話でしょうか。

次に様々な波動関数の形を見せてもらいました。s、p、dあたりはよく見るものですが、fになると「へー、こんな形なの」という感じです。陽子のプラス電荷と電子のマイナス電荷の絶対値がもし違ったらという話も、通常は疑いもしないことなので、新鮮なものでした。 これらの基礎知識を基に水素分子、エチレン分子の電子状態計算へと進み、最後は固体の電子状態をクラスターモデルにより計算するという舘脇教授が現在研究している最先端の事例を紹介してもらいました。

司会を務めていた研究科長が最後に述べていたように、内容は少し難しかったかもしれません。しかしこのような難解な学問に情熱を捧げ、他人が聞いても面白いとは思えないところで「おもしろいですね、すごいことですね」と嬉々として話す第一線の研究者と同じ空間・時間を気軽な雰囲気の中で共有し学問の楽しさを感じるというのも、サイエンスカフェの一つの目的ではないでしょうか。

[戻る]