開催報告(第4回)

秋の夜空の天文学

講師 : 杉谷 光司
日時 : 2006年9月15日
会場 : 7th Cafe (中区栄)

第4回サイエンスカフェは、9月15日(金)に開催されました。今回の場所は、中区栄に位置するナディアパーク7階の7th Cafe(セブンスカフェ)です。テーマは「秋の夜空の天文学」と題して、システム自然科学研究科教授の杉谷光司氏が担当いたしました。開放的な空間に、個性的なソファーを並べ、テレビ塔越しに秋の夜空を眺めながら、天文学の思いにふける、まさにうってつけのロケーションです。参加者も38名という大勢の方々にお越しいただきました。

講義は、タイムリーに冥王星の話題からはじまりました。8月にプラハで行われた国際天文学連合(IAU)総会で、惑星の定義が史上初めて決定し、第9惑星とされていた冥王星は、Planet(惑星)からDwalf Planet(矮惑星:仮称)に格下げされることになりました。このことは将来、教科書が書き換えられる大きな出来事として大きなニュースになりました。今回このような結論に至った詳しい経緯が、杉谷氏から解説されました。発端は、冥王星よりも遠くに軌道が位置し、冥王星よりも大きな2003UB313の発見です。当初は第10惑星発見とか、小惑星セレス、冥王星の衛星カロンそして2003UB313の3つを加えて、惑星が12個になるのではといわれましたが、結局これらの天体と冥王星はDwalf Planetと定義されることになりました。近年、観測精度が向上し、今後同様な天体が多数見つかってくることが予想され、惑星の定義が必要になったのです。惑星が100個あったら多すぎますね、ということです。続いて、今回の総会で決まった惑星の定義や、アステロイドベルト、トロヤンアステロイド、カイパーベルト、オールトの雲など太陽系の構造について詳しい解説がなされました。

後半は、秋の夜空に見られる星座を題材に、最新の天文学の話題が続きます。まずは、ペガスス座です。ペガススとはギリシャ神話に出てくる伝説の動物(天馬)のことです。このペガスス座の近くに、ペガスス座51番星と呼ばれる、天文学を知るものには有名な星があります。ここは、太陽系外に存在する惑星(系外惑星)が、恒星の周りに見つかった初めての例です。そこでどうやって見つけるのか、そのテクニックについて詳しい解説です。ドップラー効果によるスペクトルの変化を、高感度の検出器で確認する方法を、なぜかハンマー投げの室伏重信(室伏広司の父)を例えに、かみ砕いた説明がなされました。もうひとつ、やはりペガスス座の近くにあるHD209458と呼ばれる星にも、惑星が見つかっています。この場合は、恒星前を惑星が周期的に横切るために、星の明るさが変化する珍しい例です。参加者からは、系外惑星はしらみつぶしに探すのかと、鋭い質問がありました。天文学の世界では実はそれが正解です。

最後は、太陽系のカイパーベルトのようなデブリディスク(塵の円盤)をもつ恒星の発見について。恒星と惑星が存在した場合、電波望遠鏡による観測やシミュレーションでデブリディスクができることが予測され、実際にハッブル宇宙望遠鏡を使って証明がなされたことについての解説。参加者からは、円盤をもつ天体は多いのかと質問がありました。確かに回転運動をするものには円盤はつきもののようです。スケールの大きい話に、時は一瞬に過ぎましたが、参加者の皆さんは最後まで真剣に話しに聞き入り、熱心に質問をされていました。

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