開催報告(第10回)

石鹸膜(シャボン玉)の数理

講師 : 橋本 佳明
日時 : 2007年4月20日
会場 : café SIMON (昭和区長戸町)

4月20日(金)に昭和区のcafé SIMONにて、第10回サイエンスカフェが開催されました。「石鹸膜(シャボン玉)の数理」というタイトルで、関数方程式が専門の橋本佳明教授が変分問題についてシャボン玉の実演を交えて話題を提供されました。

乗物に乗って、ある駅から別の駅に行くのにもっとも短い時間で行く方法はどうかというような問題を、数学では変分問題と呼ぶそうです。話は、坂の上からボールを転がり落とすときに、「まっすぐな下り坂、盛り上がった下り坂、お椀状に湾曲した下り坂では、どの坂を一番早く下りきるか」という「最短降下問題」から始まりました。少し話が進むと「汎関数」「変分法」という少しなじみの薄い数学の専門用語がでてきました。数式は、オイラーの方程式へと変わっていき、それを解いた結果、最後はサイクロイド曲線と呼ばれるお椀状に湾曲した下り坂が、最速であるという結論を見せていただきました。

2番目の話題は、「表面積が一定で体積が最大となるのはどんな形か」という「等周問題」で、数学的には、ある関数の停留値を求める問題ということだそうです。

3番目の話題は懸垂線(カテナリー)という曲線で、送電塔の間にぶら下がっている電線の描くカーブがこの曲線に相当するものです。これも橋本先生が持ってこられたひもを両手で持って実演されながらの説明でした。

最後の話題は、極小曲面(プラトー問題)と呼ばれるもので、針金で作ったいろいろな形の枠を境界とし,石鹸幕を張るとどのようになるかという問題でした。実際に針金で作った四面体を石鹸液につけて持ち上げてみると、四面体石鹸膜はなかなかできなくて、ほとんどの場合、四面体の重心を頂点とし四面体の枠を底辺とする4つの三角形ができてしまいます。この例では答えは一つでは無いそうです。この辺りになると、私の頭では全くついていけませんでしたが、数学の分かる人には分かるようです。しきりにうなずいている人もいました。私は、正四面体や正六面体の枠組みをした針金で小学生と一緒にシャボン玉作りに熱中していました。サイエンスカフェで、こういった小実験を体験できるのも面白い試みかもしれません。

全体的にやや難解なテーマでしたが、数学を庶民的な話にすることが、それだけ難しいということではないでしょうか。

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