開催報告(第16回)

上手な打ち方、投げ方、育て方 〜プロ、高校野球に学ぶ少年野球指導法〜

講師 : 太田 和義
日時 : 2007年10月19日
会場 : 喫茶 湖水 (北区楠味鋺)

第16回サイエンスカフェは、10月19日(金)、北区の「湖水」で開催されました。「上手な打ち方、投げ方、育て方 〜プロ、高校野球に学ぶ少年野球指導法〜」というタイトルで、太田准教授が担当されました。

野球の投球動作やバッティングの際の力の伝わり方の原理から解説が始まりました。投球では、最も重要なのは軸足から前足(フリーフット)への重心の移動であり、体幹の捻れをほどきながら、肩、肘、手首、指、ボールへと力が伝わっていくこと。ボールに最大の速度を与えるには、肩、肘、手首、指が、それぞれ最大速度に達した時点で順に次の動作が始まれば、最大の積算速度が得られること。プロ野球選手のフォームを解析すると、各部分の動きがほぼ理論通りの動きをしていることなどが図とグラフで示されました。プロの選手でも故障しているときには、この最大速度の連続的積算性が損なわれることも紹介され、理論の正しさが理解できました。これらの理想的なフォームを達成するには、体が鞭のように「しなう」ことが必要で、そのために体の柔軟性を増強するトレーニングが必要であることも述べられました。

バッティングフォームもほぼ同様で、下半身の踏み込みと体幹の捻れに始まり、腰の回転(ひねり戻し)、肘の伸展、手首の伸展、バットヘッドの動きへと速度が加算されることが重要であることが図解されました。バッティングスイングでは、いわゆる「ドアスイング」とよばれる、体、腕、手首、バットが一体となってドアのような回転をする悪い例が、実演によって紹介され、このような動きでは、各部分の速度が加算されないため速度が出ないことがよく分かりました。さらに、上側の握り手(トップハンド)と下側の握り手(ボトムハンド)の握り方と振り方の説明があり、パワーを出すには、金槌で釘を水平にまっすぐ打ちこめるようなスイングが良いことが、実際の握り棒で実演されました。

話題はさらに詳細な投球フォームに移り、プロ野球選手のフォームを参考にして、投球動作時の踏み込み距離や、回転軸とボールとの距離などの理想型が解説されました。

これらの解説の資料として、長年少年野球の指導で講師自身が使用されてきた50ページにもわたる資料が配付され、プロ野球の名選手、名監督、高校野球の名監督の指導法、名言集の解説も行われました。

最後に、小中学生を対象にしたトレーニングの例が紹介されました。講師自身が考案した「遊び」と「競争」を取り入れたボール運びゲームによって「柔軟性を育む筋力トレーニング」ができることが説明され、参加者の関心を呼びました。参加者の中には少年野球の女性トレーナーもいて、活発な質疑が交わされました。また、年配のソフトボール選手も参加され、野球の投球フォーム、バッティングフォーム、トレーニング法の基本が分かり参考になったというアンケートをいただいき、少年野球にとどまらず、市民の野球理論への関心の高さと広がりが感じられたサイエンスカフェでした。

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