開催報告(第17回)

地球大気とタンパク質分子の進化 〜細菌と人と環境と〜

講師 : 櫻井 宣彦
日時 : 2007年11月16日
会場 : ツヅキ&リントンコーヒーハウス (中村区太閤通)

第17回サイエンスカフェは、11月16日(金)、中村区の「ツヅキ&リントンコーヒーハウス」で開催されました。「地球大気とタンパク質分子の進化 〜細菌と人と環境と〜」というタイトルで、桜井宣彦 助教が担当されました。

最初に今回のタイトル全体に関わる「脱窒菌」や「脱窒過程」の説明から話が始まりました。窒素と酸素が大部分を占める地球大気の組成が説明され、温暖化の原因として問題となっている二酸化炭素などの温室効果ガスは微量であることが示されました。次に、地球上の窒素原子の循環経路が説明され、窒素化合物を大気中の窒素に戻す働きをする「脱窒菌」がその循環に重要な役割を果たしていることが説明されました。

次に地球温暖化に対する脱窒菌の影響について学びました。まずは脱窒菌が放出する亜酸化窒素の地球温暖化に対する寄与度の説明から導入が始まり、その主な放出源が示されました。次に完全な脱窒過程では起こらない亜酸化窒素がどのような仕組みで発生するのかが説明されました。発生の原因は、脱窒関連酵素の細胞膜上のトポロジー・位置関係から推定されることが解説されました。

3番目の話題は、地球誕生からの生物の歴史について、特に多細胞生物が現れる以前の時代について学びました。おおよそ46億年から40億年前までは生物にとって「化学進化の時代」と言われ、原始生命の材料が地球上あるいは地球外から、もたらされた可能性について説明がありました。そして、増殖可能な原始生命の世界について、諸説ある中でもRNAワールドとプロテインワールドの2説について、対比しながら解説されました。さらに共通祖先の発生場所について推定を行い、酸素を発生するシアノバクテリア大増殖の時代、そして酸素を使う生物の出現、そして、真核生物がどのように出現したかを考えました。原始細菌の共生によって真核生物が出現したとする「共生起源説」について学習し、「有毒な酸素」の出現と「それを利用する酸素呼吸」の出現の歴史が説明され、次の話題となる酸素結合タンパク質への導入が行れました。

最後の話題は、酸素分子と酸素呼吸でした。酸素分子の生体内の移動に関わるヘモグロビン・ミオグロビンなどのタンパク質分子について説明されました。そして、酸素呼吸の要となっている「電子伝達系に関わる酵素」の解説が行れ、それらのタンパク質分子のトポロジーや、その電子伝達系路における働きが解説されました。その中で、化学浸透説やATP合成の回転触媒説についても学びました。さらに、シトクロム酸化酵素の立体構造からそのタンパク質内部での電子伝達系路について学び、個々のサブユニットが脱窒菌の脱窒関連酵素のパーツからできていることが明らかにされ、分子共生という概念が解説されました。

今回の講師桜井先生の考案による趣向として、参加者全員に「手作りの団扇」が配布され、場面場面で提示してもらうことにより、参加者の理解度や意見・関心を探りながらの話題提供が行れました。その効果もあって、多くの参加者から質問が続出し大変充実した2時間でした。

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