開催報告(第19回)

見えない光で、甘さを “みる”   〜近赤外分析法:ミカンから血液まで〜

講師 : 片山 詔久
日時 : 2008年1月18日
会場 : 水中花 (名東区一社)

第19回のサイエンスカフェは、1月18日(金)、名東区の喫茶店「水中花」で開催されました。「見えない光で甘さをみる 〜近赤外分析法:ミカンから血液まで〜」というタイトルで、当研究科の片山詔久氏が担当しました。

物を壊さないで中身を知る、といっても中身の一側面ですが、これが実現すれば便利なことが、世の中にはたくさんありそうです。ミカンを例として、つぶさないでどのようにその甘みを知るか、ちょっと難しいけれど実際にやってみよう、というのが今回の話の前半部分でした。後半はこの方法が発展すればどのようなことができるか、そして最先端の研究は今どこまで進んでいるのかという内容でした。

まず、ミカンの甘さを従来行われてきた方法で実際に測ってみようということで、屈折糖度計の紹介と説明がありました。これを使って参加者がミカンを絞り、ジュースの糖度を測りました。最初はとまどっていた方も、水を測ったら本当に糖度ゼロだとか、隣の席のミカンを測って食べ比べた甘さと合っているなどと言いながら、この従来法を体験しました。

次にちょっと難しいけれどという前置きで、近赤外法とケモメトリックスの紹介がありました。目に見える可視光線、そして目に見えない近赤外線とは何かという話から、近赤外線で分子の振動を見ているという説明がありました。物質に近赤外線を照射して得られる結果は非常に複雑で、ここから意味のある結果を得るためには統計的な手法であるケモメトリックスと組み合わせなければならないという内容を豊富な絵を使って解説しました。ここがやはり一番難しいところだった感じです。でも安心。フルーツセレクターというポータブル近赤外分光器で実際に果物の甘みを測ってみて、参加者も使ってみて納得という感じです。やはり実物を見て使ってみるのが一番のようです。

続いて、現在研究段階の事柄について話は発展しました。自転車をこぐときの血中酸素消費量や、料理や運転中の脳の活性化が、近赤外吸収を分析することによって判るという事実が紹介されました。さらに血を採取することなしに血糖値を測るという話に移りました。現在行われている自己採血して血糖値を測る方法を示し(ちょっと痛そうです)、実用に近づいている近赤外線による測定法の利点、問題点が解説されました。これが実用となれば、糖尿病予備群の方にどんなに朗報かと思います。

最後に「こんな非破壊分析が出来たら良い」というテーマでの討論はあまり時間が無く、2時間を少し越えてサイエンスカフェは終わりました。かなりの年配の方から、子供さんまで一緒に楽しみ、話が尽きない様子でした。当日申し込みの方も何人かおられて、ケーキが足りなくなったり、参加していただいた方の人数が多くてスタッフが室外で寒さに震えたり、いろいろハプニングはありましたけれど、参加者の方々の満足された顔をみて一安心というところでした。

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