開催報告(第20回)

β−カロチンの活性酸素消去能力を測る

講師 : 清水 興安
日時 : 2008年3月14日
会場 : 珈琲館 煌(きらら) (中川区押元町)

第20回サイエンスカフェは、3月14日(金)、中川区の「珈琲館 煌(きらら)」で開催されました。「β−カロチンの活性酸素消去能力を測る」というタイトルで、清水興安教授が担当されました。当日はあいにくの雨にもかかわらず、多くの参加者がお越しになり、また、清水先生が今年度でご退官ということもあり、本研究科からも多くの先生方が最後のお話を聞きに見えました。

まずは、今回のタイトル全体に関わる「活性酸素」の説明から話が始まりました。活性酸素の原料やその人体への影響を話され、具体的な定義を明らかにしました。狭義の活性酸素種、4種(ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、過酸化水素、一重項酸素)の分子種を示し、その電子配置を説明されました。電子のスピンから、一重項、二重項、三重項状態の説明まで、アニメーションを用いて難解な内容を分からせようとする、苦労が見受けられました。

次に、活性酸素の生体内での発生源について話されました。理解しやすいように、生体での燃焼を車のエンジンや燃料電池との比較によって説明され、生体における酸化にも酸素が必須であり、そこから程度の差こそあれ、活性酸素種が生成することを示されました。

本題は先生自身の研究へと向かい、光増感作用による一重項酸素の生成について説明されました。普通の酸素(三重項酸素)が光のエネルギーを受けた他の分子(光増感分子)からエネルギーを受け取り、励起一重項酸素となり、燐光を発しながら、三重項酸素へと戻ることが示され、生体に有毒な一重項酸素の濃度を燐光によって定量できることを示されました。

後半は実際の清水先生のデータを示されました。この中にはサイエンスカフェのために取ったデータや、世界初のデータも含まれていたようです。DNAやアミノ酸が光増感分子となり、励起一重項酸素を生成している燐光スペクトルやβ−カロチンを初めとするサプリメントが励起一重項酸素の消去や生成抑制を示している燐光スペクトルを見せていただきました。単純な比較は難しいもののβ−カロチンがカテキンの千倍以上、強力な励起一重項酸素の消去能力があることなどが分かりました。

本研究科の先生が多く見えたこともあり、参加者からはたくさんの質問(特に実用や人体への影響など)や活発な討議がなされました。特に「先生方はサプリメントを取っていらっしゃいますか?」と言う質問には巧妙な質問であると感心しました。反面、後方からの多くの先生方の返答は少し高圧的であったかもしれません。スタッフにも「理学的基盤研究には分かりやすい説明努力をしなければならない」という教えを自ら示されたようなサイエンスカフェでした。

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