開催報告(第21回)

世界を旅するIPパケット 〜インターネットがつながる仕組み〜

講師 : 宮原 一弘
日時 : 2008年4月18日
会場 : 喫茶 トレニア (熱田区三本松町)

第21回サイエンスカフェは、4月18日(金)、熱田区の喫茶トレニアで開催されました。「世界を旅するIPパケット 〜インターネットがつながる仕組み〜」と題して、本研究科の宮原一弘 助教が担当しました。実は、このサイエンスカフェホームページの作成は宮原氏が行っており、今回はページデータがどのようにして皆さんの家まで運ばれるかという点に焦点を当てた内容でした。

まず、タイトルにもなっているIPパケットの解説から話が始まりました。私たちが普段利用している電子メールやホームページ、IP電話といったデータは、例外なくすべてIPパケットになるそうです。データが、ある単位にしたがって分割され、それに宛先や送信元を示すIPアドレスなどの情報が付加されてIPパケットになるという、とても単純な構造が示されました。続けて、IPパケットによる通信がどのようなものか体験してもらうため、印刷された写真を細切れにし、宛先を書いた封筒(パケット)20通に分けて会場内を転送するという実験を行いました。結果は惨たんたるもので、パケットが紛失したり、順番が分からず、そう簡単に写真は復元できませんでした。すべてのインターネット通信はIPパケットによると言っても、所詮この程度の信頼性だという話には驚かされました。

次に、通信の信頼性を向上させるTCPパケットの導入について説明がありました。パケットにデータの順番を記載し、途中で発生した欠落を補完する仕組みを取り入れるだけで、IPパケットだけによる“信頼性のない”通信から、正確な通信が可能となることが示されました。

続けて、IPアドレス、ポート番号、ホスト名、ドメイン名といった用語の説明がされました。IPパケット、TCPパケットに加えこれらの仕組みを用いることで、インターネットに接続されたコンピュータで動作しているプログラム同士が、お互いに信頼性のあるデータ通信を行えるということが示され、通信の仕組みについての話題は終了しました。

後半は、サイエンスカフェのホームページを見るために、参加者の自宅から名市大のWebサーバ(サイエンスカフェのホームページを記録しているコンピュータ)まで、どのようにIPパケットが“旅”してくるのか、といった話題になりました。それぞれの自宅のコンピュータから電話線(ADSL)や光ケーブルを通って下界に旅立ったIPパケットは、いくつかのプロバイダネットワークを経由し、SINETと呼ばれる学術情報ネットワークへ進んでいくそうです。そこから、SINET加入機関である名古屋大学を経て、名市大のWebサーバまでやって来て、旅は終わりになるということでした。

興味深いのは、千種区にある宮原氏の自宅から瑞穂区の名市大まで約5kmの道のりだそうですが、IPパケットはなんと(それも必ず!)東京を経由するそうです。にもかかわらず、所要時間は1秒以下! これでは世界が近いと感じる訳です。また、Webサーバが繋がっている地域やネットワークによって、いくつかの経路があることが紹介され話題提供は終わりました。続いて、参加者との質疑応答があり、「転送の速度」や「回線が太いとか細いと言われる意味」についても理解が深まりました。インターネットがより身近にイメージできるようになった2時間でした。

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