開催報告(第23回)

生物多様性シリーズ 1

生物の種の多様性と特異性を維持するしくみ
  〜カエルがカエルの子しか生まない理由〜

講師 : 加藤 宏一
日時 : 2008年6月20日
会場 : 喫茶 エーデルワイス (東区東桜)

第23回のサイエンスカフェは6月20日(金)に、中区の喫茶エーデルワイスで開催されました。「カエルがカエルの子しか生まない理由」というタイトルで、当研究科の加藤宏一教授が担当しました。

生物多様性シリーズの第1回ということで、まず生物多様性とは何か、また生物多様性条約の目的と2010年に名古屋で開催されることが決まったCOP 10(第10回締約国会議)についてのおおまかな説明がありました。

生物多様性という語(ことば)の説明として一番分かり易いのは地球上には多種類の生物が住んでいますよということなのですが、そもそも生物の種類(種)というのはどのように区別されているのでしょうか。これについての一般的な定義の紹介から、生物の多様性と種の特異性(種としての独立性の維持)とは表裏一体の関係にあり、これがそれぞれの種の生殖方法と密接にかかわっていることが解説されました。加藤先生が研究材料として使っているウニ類について、生息場所や生殖時期の違い、受精の進行過程での種の特異性の維持のための機構について多数の写真を示しながら説明があり、身近な食材である「ウニ」にひそむ精妙な自然のしくみに感嘆の声も聞かれました。

後半は、同じ海の生物でも、一般の方々にはなじみの薄い原生生物の一種「渦鞭毛虫」についての話題で始まりました。たくさんのプランクトンを並べた写真が配布され、原生生物でないものや、同じ種の生物、光合成をする生物を探すクイズに話が進みました。顕微鏡でしか観察できない小さな生物が古生代からたくさん生き続けており、その中には赤潮の原因となったり、貝毒の原因となるなど、人の生活にも大きな影響を与えている生物がたくさんいることが紹介されました。この仲間の生物には、いろいろな増殖法をもったものが存在するが、なかには分裂(栄養生殖)しかしないものがあり、高等な生物とは大いに異なる方法で種の特異性を維持していることが示されました。それでも、ゾウリムシや珪藻類など、ある一定の分裂回数や条件が整うと、「接合」によって遺伝子の交換を行って「リセット」するという、増殖を持続させる為の巧妙なしくみが存在することが紹介され、微小な原生生物の巧みなライフスタイルに驚かされました。

多彩な原生生物とウニやヒトデなど水中にすむ多様な生物の受精や増殖方法についても巧妙な多様性維持のしくみが隠されていることを興味深く学んだサイエンスカフェでした。

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