開催報告(第28回)

分光計測で何がわかるか
  〜光を色、時間、方向で分ける〜

講師 : 渡邉 凖
日時 : 2008年11月21日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

サイエンスカフェ第28回は11月21日(金)にナディアパーク7階の7th Cafeで行われました。「分光計測で何がわかるか〜光を色、時間、方向で分ける〜」とのタイトルで、分光学の基礎を分かりやすく、実物を示せるものはできるだけ示してお話しいただけるよう、システム自然科学研究科准教授の渡邉 凖氏に準備いただきました。

まず光を色で分けることに必要な器具として、お馴染みのプリズム、主流である回折格子、鏡のように見える干渉フィルターの現物をお見せし、特に高い分解能を持つファブリペロー干渉計は写真で紹介しました。どれも同じように見える干渉フィルターがそれぞれ固有の色の光を透過するのには参加者の方々も驚かれたようでした。

次に色で分けるといっても、波長を考える場合と、波数を考える場合があり、光のエネルギーが問題となるときは、波数表示が普通であることをお話しました。例として蛍光分析の際、ラマン散乱光が励起波長によって大きく変動することを示しました。吸収スペクトルから分かる事柄として、加水分解により吸収スペクトルが変化するが等吸収点が存在する例をあげ、反応の前後で物質の総量が不変であることが分かることを説明しました。

次いで配布した簡易分光器で喫茶店の白熱電球のように見える照明器具を観察して貰い、虹の七色だけではなく、数本の輝線が存在することを確認して頂きました。白色LED灯の発光は緑青近辺が暗く、青みが強いことも見て貰いました。照明器具は実は蛍光灯であり、七色の連続スペクトルは蛍光物質の、輝線は水銀ともう一種の物質による発光であること、物質固有の発光スペクトルを測定することによって、恒星等の離れた場所での元素の存在、恒星の後退速度、温度、磁場の強さ等もわかることをお話しました。

太陽光のスペクトル写真を映して、暗線(フラウンホーファー線)が存在することを指摘、太陽大気中の元素による吸収であること、これによって新元素が太陽大気中に発見され、太陽にちなんでヘリウムと命名された後、地球上でも発見されたことをお話ししました。

トンネル内部の照明によく使われている大型ナトリウムランプを点灯し、簡易分光器で黄色の輝線スペクトルが一本だけ見えることを確認して貰いました。続いてリチウム、カリウム、銅などの化合物が花火の色のように炎を染める炎色反応を紹介しました。最後にナトリウム炎を点火し、ナトリウムランプと同じ色であることを見て貰った後、最初の手品として、ナトリウムランプの前のナトリウム炎が黒い炎に見えることを披露しました。これが吸収スペクトルの現れであること、黒いということは、黒いものがあるとは限らず、周りより暗ければ黒く見えること、太陽の黒点と同じ意味での黒い炎であること、と種明かしをしました。

この後休憩に入りましたが、その間も光やエネルギーについて様々な質問が飛びだし、市民の皆様の関心の対象が広いことに驚かされました。

いささか延びすぎた休憩の後、「光を時間で分ける〜高速分光」のお話をしました。高速時間分解測光に使用する機器を三種紹介しました。高速現象追跡の原理として、繰り返し現象は周期をずらせてサンプリングすれば、全波形を観測出来るということを説明するために、ストロボスコープと玩具の扇風機を持ち出しましたが、この例えは失敗だったようです。誤解を招いたらしく、質問が集中しました。

時間が超過しそうになったので、最後の、「光を方向で分ける〜偏光測定」の話は取りやめとし、最後の手品として偏光板を用いたマジック・ボックスの披露だけ行いました。木箱の両脇に開けた窓から、内部に黒い膜が張ってあるように見えるけれど、手袋をはめた手が自由に通過できるというものです。このマジック・ボックスの小型のものを作れるよう、偏光板と作り方の解説を配布して終わりといたしました。このマジック・ボックスもかなり不思議だったらしく、多くの人が実際に中に何もないことを確認にみえました。

[戻る]