開催報告(第29回)

生物多様性シリーズ 4

愛知・名古屋の哺乳類の多様性を語る

講師 : 野呂 達哉
日時 : 2008年12月19日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

12月中旬の栄の夜は様々なイルミネーションに飾られていた。しかし、ビルの7階にあるここセブンスカフェは、別世界のように静かで、落ち着いて今日の話題に集中することができた。

話は、話題提供をしてくださった野呂さんを含めて動物生態学を目指す学徒の就職がいかに厳しいか、そういう中でもこの分野に飛び込んでくる学生がいかに動物に対して情熱を持ち、今回のお話のデータ収集に貢献してくれているかという話で始まった。このような研究をいかに維持できるかが社会の懐の深さのような気がして、生物多様性の重要性が唱えられている今こそ、何かできると良いなと考えさせられた。

そして本題が始まった。もぐらの話が中心であった。もぐらは「太陽に当たると死ぬ」というのは、めったに見かけることがないからできあがった迷信らしいということであった。昔は食虫目という目に分類されていたがいまはトガリネズミ目となり、トガリネズミ科とモグラ科に分けられるという。

ところで、モグラはねずみとどう違うか。長い吻をもち、それが動く。耳介がほとんどない。目の発達が悪く、種によっては、切歯(前歯)は犬歯状になるあるいは、犬歯が他小型の切歯状になることがある、とのこと。ネズミと異なり、歯はすり減るだけなので、歯がすり減ってやがて食事ができなくなるのが死亡(老衰)の主因ではないかとの話であった。面白かったのは、ミズラモグラというモグラの話である。このモグラは犬歯が長く切歯が短いので、口を閉じても前歯の間に隙間があり、そこでネズミを吸い込むように丸呑みするのではないかという話である。頭骨標本も持って来てくださっていたので、現物を見ながらわかりやすかった。

日本は有数のモグラ大国であるというのも、初めて聞いた話で、地表性には、トガリネズミ型、ジネズミ型が属し、半地下性生活をするヒミズは、名古屋市レッドリスト1Bに指定されているが、東山の森にもいるそうである。半水性のカワネズミは、東三河の山間部に多く、渓流釣りを楽しむ人たちは見たことがあるのではないかということであった。

もぐらの毛皮標本を回覧していただいたが、皆さんとても興味深く見入っていた。このあたりから質問がでてきて、だんだんと話が進まなくなってきた。もぐらのために堤防や田んぼ、ゴルフ場が困っているという話を聞くが、対策は、つまるところ、捕まえるしかないとのこと。モグラは排他性が強い、つまり出会うと結構けんかをするが、大きさの違う種類だと餌が異なるためか共存できるそうだ。ヒミズとヒメヒミズが混成しているところでは、実際にどのように棲み分けをしているのだろうか、というのが野呂さんの研究テーマだそうだ。

天然の岩礫地でさわら、ひのきの生えているところにヒメヒミズ、カラマツなど土壌の堆積地したところにヒミズがおり、ヒミズがヒメヒミズを追いやったという説があるそうだ。しかし、野呂さんが、ヒミズとヒメヒミズを出会わせる実験を行ったところ、同種同士では喧嘩するけど一緒にいるが、異種だと全く行き来しない。どうもにおいかなにかが回避手段になっているのではないかということだった。

最後に、外来種の話となり、アライグマ、ノネコ(リビアヤマネコを起源とするイエネコ、カイネコの野生化したものをノネコと呼ぶ)がいかに日本の野生動物をおびやかしているかを話していただき、参加者はそれぞれに自分の周囲の自然に関心を深めたのではないだろうか。

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