開催報告(第30回)

生物多様性シリーズ 5

天に金鯱、地にヒメボタル
  〜その魅力と生息地について〜

講師 : 近藤 記巳子
日時 : 2009年1月16日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

第30回のサイエンスカフェは、1月16日にナディアパーク7階のセブンスカフェで開催されました。講師は、名古屋市内のヒメボタルの観察を10数年続けられているという(財)日本自然保護協会自然観察指導員で、「ヒメボタルサミット in 愛知」実行委員会の近藤記巳子氏が、「天に金鯱、地にヒメボタル 〜その魅力と生息地について〜」のタイトルで講演されました。

ヒメボタルは日本各地に分布し、発生時期が5〜6月で、オスが9mm、メスが7mm程度のごく小さなもので、森、果樹園、竹林、神社などに棲息し、幼虫はオカチョウジガイ、キセルガイなどの巻貝やカタツムリ類を食用とする陸生のホタルであること、メスは羽が退化して飛べないことなどの解説がまずなされました。

発光最盛期には多数が一斉に光り、一斉に消えるという同調(シンクロナイズ)を繰り返し(集団同時明滅と呼ぶ)、その様子はまるで満天の星空を見るような感動を覚えるとのことでした。また、他のホタルと違い、遅い時間に飛ぶのが特長で、飛ぶ時間帯や飛び始める時期(初見日)が地域によって異なり、同じ名古屋市内でも名古屋城外堀では発光の時間帯は共に午前1時〜3時がピーク(初見日は名古屋城より相生山緑地がやや早い)を迎えるという説明などがありました。

ここ10年ほどの調査で、初見日はどうやらソメイヨシノの開花日(立春からの積算温度が約500度で開花する)と関連が深いらしいことを見いだし、ミカンの花の香りの立ち初めやケラの鳴き出し初めに成虫になって飛ぶことの発見もあったと報告されました。

続いて「生物多様性」について触れられました。蛍全般について、(1)生態系の多様性では、山地から平地まで、川岸、田んぼ、ブナ林、竹林、草原などに棲息すること(ヒメボタルは少し湿っぽい場所ならどこでも)、(2)種の多様性では、蛍は世界には2000種、日本では40種いること(光らないホタルも多い)、(3)遺伝子の多様性では、大型 小型、薄暮型 深夜型と多岐にわたること、などが示され、環境の保全、改善が必須であることを強調されました。

予定の講演終了の後、ヒメボタル愛好家で写真撮影が趣味だという小川浩氏のパネル写真が公開されました。高速道路から発せられたと思われる種々の光をバックに、ヒメボタルの明滅状態を写した幻想的な写真に、参加者は身を乗り出して見入っていました。氏はご商売が酒屋だが、夜な夜なカメラを引っさげて出かけるので、近所の小学校の低学年生に「酒屋さん」てどんな仕事をする人のことかと聞かれたというエピソードが紹介され、笑いを呼んでいました。

最後に質問の時間を設けましたが、参加者がめいめい挙手をして講師に尋ねるという一般の形式ではなく、予定講演の後の10分弱の休憩時間に、参加者が質問内容をメモし、担当事務職員がまとめたものについて答える形を取りました。

幼虫の越冬状況は? 飼育は可能か? 暗い中での頭数の数え方は? 観察会に参加したいがどうすればよいのか? などの質問に対して丁寧な説明がありました。幼虫はイカそうめんが好きなので、捕獲時にはこれを利用することなど興味深い回答などがあり、30名を超える聴視者は熱心に聞き入っていました。

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