開催報告(第31回)

生物多様性シリーズ 6

虫の灯火採集からわかる名古屋の森の多様性

講師 : 井上 晶次
日時 : 2009年3月13日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

第31回サイエンスカフェは、♪ちょうちょ〜ちょうちょ〜♪の歌で始まった。続いていろいろとなじみの童謡唱歌を聞かせていただいたが、日本の歌の中にもコガネムシ、マツムシ、トンボなど、いろいろな虫が登場していることを再認識させられた。日本にはコウチュウ目の昆虫がおよそ9000種、ガが6000種、チョウが320種、トンボが215種くらいおり、名古屋ではそのうちの10〜40%が見つかるそうである。

記録でみると、時代の変遷とともに名古屋でみられるトンボやチョウの種類は減少しているが、ガ、コウチュウ、ゾウムシの種類はふえていることになるらしい。発見される昆虫の種類が増えているのは、歓迎すべきことの様でもあるが、じつは、昔は十分な調査ができていなかったからというのが真相らしい。

昭和22年、昭和42年、昭和58年、平成17年の名古屋市の緑被率地図をみると、昔は市街地の周辺には豊富な緑があったのに、今では、まとまった緑は、名古屋市の南西部と北東部に少し残っているのみである。草木が豊富であることが、虫の棲息環境としては良いのであろうが、名古屋の緑はどんどんと減少しており、虫の多様性が増しているとは思われない。

つまり、長年にわたる安定した調査がとても大切であるということになる。そこで、話題提供者の井上さん達は、灯火採集という手法で、昆虫の現状についての調査を始められたそうだ。

調査地として、名古屋市内の熱田神宮、平和公園、相生山緑地、戸田川緑地、大高緑地、八竜緑地を選び、2006年から調査をしているそうだ。相生山には樹木で育つガが多く、河川敷にある戸田川緑地では草を食べて育つガが多いという結果はすぐに納得がいった。熱田神宮は、昆虫の種類が少ないと言う話は意外であったが、周囲を広い国道に囲まれているためであろうと聞いて納得した。

灯火採集で得られた昆虫の標本と井上さんの専門とするゾウムシの標本を、あわせて10箱ほど展示してくださり、皆さんの関心を集めていました。

会場には、何度か会場で見かけたことのある方や、九州から名古屋に出張のついでに参加してくれた方もおられたが、それぞれに満足をして帰途につかれたようである。

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