開催報告(第33回)

タンパク質がおもしろい
  〜蛍光タンパクからBSEプリオンまで〜

講師 : 森山 昭彦
日時 : 2009年5月15日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

第33回サイエンスカフェは、いつもは司会をしておられる森山先生がそのまま話題提供者となり、タンパク質の話をされました。

まず、2008年にノーベル化学賞を受賞された下村先生の研究に関するいくつかのエピソードから、タンパク質の話題がスタートしました。緑色蛍光タンパク質(GFP:Green Fluorescent Protein)の発見は、下村先生のオワンクラゲの発光タンパク質研究の副産物であったことや、その応用について紹介がありました。例えば、ネズミに移植したガンがどのように大きくなり、また転移していくのかをネズミを傷つけることなく観察できるようになったこと、脳神経細胞を蛍光タンパク質を用いて1個ずつ染め分け可視化したものがあたかも虹のように見え、ブレインボウ(Brain + Rainbow = Brainbow)と名付けられたことが画像とともに紹介されました。そして、この医学研究への応用の素晴らしさによりノーベル賞が授与されたということの説明がありました。

続いて、タンパク質の語源についての説明がありました。タンパク質は「蛋白質」に始まり、「蛋」は卵の意味であり、蛋白は卵の白身だということです。また、タンパク質は20種類のアミノ酸がつながってできているというような基礎的な話がありました。具体的なタンパク質の例として、コラーゲンの保水性、クモの糸の強靭さ、ムール貝の水中接着物質、ノミのジャンプ力をささえる高性能弾性タンパク質などいろいろな特徴を持つタンパク質の紹介がありました。また、タイムリーな話題として、インフルエンザウイルスのH1N1もタンパク質であるということが紹介されました。

この頃になって外が暗くなってきたので、先生が持参してこられた蛍光タンパク室を実際に見せていただきました。緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質の溶液に紫外線をあてることにより、その蛍光を見ることができるようです。いずれもとてもきれいに光っていました。

会場からは、化粧品の選び方についての相談や、納豆キナーゼは効果があるのかといった質問が挙がりましたが、先生からの回答としては、きちんとタンパク質に対する基礎的な知識を持って、変な宣伝文句やエセ科学にはだまされないようにしてくださいとのことでした。

最後に狂牛病についての話題となりました。狂牛病は、ヒツジの伝染病がウシに伝わり、さらに人間にも感染したのではないかという仮説、あるいは、ヒトのイツフェルト・ヤコブ病や食人習慣により感染するニューギニアのクールーという病気も同様の病気であることなども紹介されました。感染のもとになるのは病原菌やウイルスではなく、ただのタンパク質だそうです。タンパク質は遺伝子がないと作れないのに、それが病原性を持っていて体内で増えるというのは確かに驚くべきことで、なるほど、この研究でプルシナー博士がノーベル賞を受賞したというのも納得がいく話でした。

全体に盛りだくさんで時間が足りない感もありましたが、概してわかりやすく、楽しい2時間でした。

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