開催報告(第38回)

生物多様性シリーズ 7

江戸・尾張の生物多様性から現代の生物多様性をみる
  〜 絶滅危惧種の今 〜

講師 : 金澤 智
日時 : 2009年10月23日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

今回は、生物多様性シリーズ第3弾の1回目、「江戸・尾張の生物多様性から現代の生物多様性をみる」というタイトルでした。話題提供してくださる金澤智先生の専門は、免疫学、分子生物学ということなので、今回の話はどうなるのかと好奇心と猜疑心が半ばでいるうちに話が始まりました。

太平洋を真ん中に据えた地球の地図における環太平洋の温泉地図から始まり、すぐに話に引きずり込まれました。巧みな話術、豊富な経験と写真もさることながら、自然を見る目線のユニークさはとても新鮮に思いました。正直な感想としては、「天は二物を与えずと言うけれど、この先生にはあてはまらないんじゃないか」。あるいは、「この先生は専門を間違えたんじゃないか」とさえ思いました。

江戸時代の「張州雑志」博物図鑑に載っているアシカと、先生が留学していたサンフランシスコで観察したアシカの写真を見せてくださり、江戸時代には、熱田神宮のすぐ南側にもアシカが沢山いたという話でした。その他にも江戸時代の名古屋には、あごひげアザラシがいたり、今では特別天然記念物となっているアホウドリもいたこと、またそのアホウドリも亜成体の写生画が残っていることから、繁殖までしていたであろうことなどを話していただきました。



話の後半は、名駅のミッドランドスクエアの窓に止まっているハヤブサの写真を示しながら、鳥の様々な環境への適応という話題から始まりました。 話の主題はコアジサシという夏に日本の荒れ地で営巣、子育てを行い、秋にオーストラリアヘ飛んでいく絶滅危惧種の保護に関する話でした。 荒れ地の石を少し動かしただけの、およそ巣とは思えない巣の写真には驚かされました。雨が降ったらどうするのだろう、真夏の日光でゆで卵にはならないんだろうか、外敵には見つからないのだろうかなどと、いろいろな考えが浮かんできて、とても好奇心を刺激されました。また、荒れ地の石や雑草によるカモフラージュの写真などは、やはり実際に観察をしているからこそ示すことのできるんだなと、座学にとどまらない話題提供者の行動力に敬服させられました。さらには、製鉄所のスラグという産業廃棄物の山をこのコアジサシの営巣値に変えようというプロジェクトも紹介され、環境保全の実践例としても斬新で面白く思いました。まだまだ途中ということなので、来年にはよい結果を期待したいと思います。こういったことが実験のおもしろさなのかとちょっぴりだけわかったような気がします。

実際に動物を観察し、写真を撮っているので豊富な写真を示してくださっただけではなく、姫ボタルの点滅発光を見て、自分の考えるのはその背後に潜むメカニズムだなどと、興味、関心の持ち方が常人とは変わっているところがとても新鮮に思いました。とにかく、とても面白く満足のいくサイエンスカフェでした。

[戻る]