開催報告(第42回)

色はいくつあるのか? 色はどれだけ要るのか?

講師 : 田島 譲二
日時 : 2010年3月19日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

今回の講師である田島教授は、画像処理の専門家で、特に色再現などのカラー画像処理を研究しています。しかし今回は、画像処理の詳しい内容ではなく、“色の数”という一見分かりやすい話で全体をまとめていました。

色の数にはそれこそ色々な捉え方があります。最初に話された「虹は7色」ということでさえ一般的ではなく、国や地域によっては6色だったり5色だったりするようです。ですから、どのように一般的に色を数えるかが問題になります。

最初の“言葉で伝達できる色の数”では、基本色11色が世界の言語で共通する色に関する言葉で、言葉だけで世界中に同じ色の概念を伝達できるという意味での色の数が示されました。この内の10色が抵抗器のカラーコードとして使われているというのは素晴らしいと思います。

ディスプレイでは、普通、赤、緑、青の三つの原色について256段階が表示できるので、出せる色の数は256の三乗で1600万色ということになります。でも、このすべての色を人は区別できるわけではありません。実際にカラー画像の色の数を減らしてプロジェクタで投影して、何段階なら原画と区別がつかないかがデモで示されました。それによると、大体各原色32色ずつでほぼ区別がつかなくなることが分かりました。すると、ディスプレイの色は大体3万色ということになります。ですが、それでは余り理論的ではありません。

ここで、“色”を感覚的にではなく数量化する必要が出てきます。ここから話は少し難しくなりました。人の色覚のセンサからの信号を、人が感じる色の差(色差)を数量的に表わすために“均等色空間”という三次元空間が導入されました。ここでもプロジェクタによるデモで、「人は均等色空間で、色差3以上の色を区別でき、色再現でもほぼこの色差以内が目標である」ことが示されました。そしてその条件で、ディスプレイの色を数えると、やはり3万色位になるそうです。

その基準は、光の反射で見える、物の色にも適用できるとのことでした。印刷で出せる色の数は、その半分くらいですが、ディスプレイに表示できない色もあり、カラーデザインに使えるように、印刷の色を全部表示できるように、色の数が5割増のディスプレイなども開発されていることが色域を図示して示されました。同じ画像を通常のディスプレイとその色域が広いディスプレイで比較して表示したものを見ると、後者ではとても画像が派手になることが分かりました。

反射物の色で面白いのは、照明の白色が同じでも、その分光分布が違うと違う色に見えるということで、通常の太陽光、蛍光灯、新しいLEDランプの三つでどのように色が違って見えるかが画像で比較されました。どれも、色の数としては余り変わらないのですが、三波長型の蛍光灯では、黄色いみかんの色の赤みが増しておいしそうになることも、コンピュータ・シミュレーションで示されました。まだ少し内容があったようですが、ここで時間となりました。

出席者は44名と盛況でした。途中と最後に質問の時間がとられて、様々な質問がありました。「日本人と外国人の見る色は同じか?」「物の色を指定するときに、『マンセル記号でなく色見本で渡せ』と言われるのだが、何故だろう?」「液晶ディスプレイのバックライトの色は正しく調整されているのか?」というように、色の話を聞いていると様々な疑問が生じてきます。これらには、納得できる答えがあるようですが、「何故'色'があるのか?」のような哲学的(生物学的?)な質問もあり、もっとゆったりと議論できる時間があってもよかったかもしれません。

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