開催報告(第46回)

野球の基本技術向上の方策は?
  〜投球障害予防法なども伝授します〜

講師 : 太田 和義
日時 : 2010年7月16日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

話題提供者は、十数年にわたり中学生の軟式野球の指導に携わっていることから、今回のタイトルは、『野球の基本技術向上の方策は? 〜投球障害予防法なども伝授します〜』というものでした。

まず、投球障害を予防する第一の手立ては、正しくボールを握ることだとの説明がありました。すなわち、親指をボールの真下に置き、親指の尺側部でボールを把持する「尺側握り」が正しい握りで、これは肩、肘の関節などに掛る負担が小さくて故障しにくいこと、逆に、親指の腹部分でボールを横方向から把持する「腹側握り」は、障害を起こしやすいとの解説がなされました。

次に、野球におけるスポーツ障害の中でも、とりわけ問題となっている野球肩と野球肘についてかなり詳細な説明がありました。ワインド・アップからフォロースルーまでの投球の位相の中で、レート・コッキング期とアクセラレーション期に負荷が強大になり故障が起こりやすいことが指摘されました。そして全力投球の際のリリース時には自分の体重に匹敵する牽引力が肩関節に掛ることなどが示されました。

さらに、正しくないフォームでの投球は、身体の一部がオーバー・ワークになり故障を来たしやすいことが投球のバイオメカニクスの図で説明されました。地面を蹴ることによる反力が、下肢から体幹、体幹から上腕へとエネルギーとして連鎖的に伝わるがことを運動連鎖(速度加重の法則ともいう)といい、下肢の捻転スピードが頂点にくる時点で体幹が捻られ、そのスピードが頂点の頃に上腕(まず肩)が動き出すのが正しい運動の連鎖であるという。これが崩れるとエネルギー総量が減る(具体的には投球スピードが落ちる)ので、体幹や上腕がそれを補おうと無理に力を出そうとオーバー・ワークになり、結果として故障が引き起こされるということでした。

最後に、打撃の話に移っていきました。まず、投球に比べて障害は少ないが、自己練習でバットスイングをする際、身体のバランスなどのことも考えて、一方の側のスイングだけでなく、逆の側(普段打たない側、右打者なら左)のスイングもある程度やるべきだとの強調がなさました。また、ごく簡単に打撃動作を説明するなら、ボールをひっぱたく時の動作は、空手チョップの打ち方や、金槌で(柱に横に出ている)釘を上手に(中心衝突させて)打つのと理屈は同じであり、バットの握り方もその時のように握ればよいとの主張がありました。さらに、左右の骨盤と肩甲骨を結ぶ線を軸とする2本の軸の、鋭い入れ替え動作をするのが強い打球を生む主要な打撃要素である投球も理屈は同じとの説を紹介し、実際の動作を交えての解説がなされました。

外部は極熱地獄のごとき暑さで、館内も蒸し暑さを覚える状態にも関らず、30名ほどの参加者は熱心に耳を傾け、目を凝らして資料や解説者の投球と打撃動作を眺めている様子でした。野球の基本技術といっても、今回は時間的関係から、守備や走塁などの技能についてはまったく触れられなかったためか、質問は存外に少ないものでした。

質問の一つを紹介すると、(子供がセカンドを主として守ったからか)肘を下げて投げる癖があるが、その矯正法は、というものでした。その解決策として、しばらく外野手を経験させてはどうか、という提案がなされました。

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