開催報告(第53回)

「鳶が鷹を生む」vs「蛙の子は蛙」:遺伝の不思議について

講師 : 田上 英明
日時 : 2011年4月15日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

第53回サイエンスカフェは、「「鳶が鷹を生む」vs「蛙の子は蛙」: 遺伝の不思議について」というタイトルで開催されました。身近な生物の話ということもあってか、50名近くの方に参加していただきました。

開始早々「サイエンスとは?」、「生命とは?」、「遺伝子とは?」、「ゲノムとは?」という問いをどんどん会場に投げかけます。少々哲学的な難しい質問も漫画や絵本、いろいろなスライドを使うと、いろんな答えが返ってきます。話題提供者の田上氏が、子供のように好奇心旺盛で「サイエンスは楽しい」と思っているのでしょう。

前半は、大学の講義のような基本的なメンデル遺伝学から最新の染色体研究まで概説されたので、少々難しいという感じもしました。しかし、高校の生物の教科書などに記載されている常識のような事実もその仕組みを紐解くと、連綿と続く生命の営みが巧妙なシステムによって如何に精巧にできているか、また多様性の重要性についても再認識できます。

後半は、遺伝についてのクイズを中心に、エピジェネティクスと呼ばれるDNA配列に依存しない新しい遺伝様式について話が展開していきます。血液型で性格が分かるか、人の指紋やアサリの殻の模様はDNAで決まるのか、といった身近な疑問から三毛猫の模様に関わる不思議やiPS細胞まで、遺伝の仕組みは本当に面白いと思いました。 タイトルの「鳶が鷹を生む」vs「蛙の子は蛙」についても、良い変異は非常にまれであるが、悪くなる変異であってもそれが別のところでは非常に良い働きをする可能性もある、という話は、働かないモノが役に立つ、といった逆説的であっても社会の仕組みにも通じるように思えます。さらには、そういったモノが固定化された集団なのではなく、「遺伝子発現のゆらぎ」によるといった最新の知見まで紹介されました。「なるほど、分かった!」と思った次の瞬間にどんどん話が展開する、まさに田上氏のぐるぐる回るスライドのように頭も活性化された2時間でした。

一見脆弱に見える生命システムが、如何にロバスト(頑健)に37億年もの間絶え間なく続いてきたのか、生物の多様性と遺伝/進化について、高校生から高齢の方までの多様な参加者の方々も、今までと少し違う角度から面白いなあと興味を持たれたのではないかと思います。

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