開催報告(第61回)

カタチの数学
  〜絡み目〜

講師 : 鎌田 直子
日時 : 2011年12月16日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


今回のサイエンスカフェは、数学の一分野、トポロジーの研究対象である「グラフ」や「結び目」が題材でした。

中学、高校で習ぶ図形の分類は「合同」と「相似」です。この分類では3角形と同じ仲間は3角形であり、4角形や円は3角形とは違う仲間です。しかし、トポロジーでは連続的に移り合う図形は同じ仲間と考えます。この分類方法は「同相」といわれます。3角形、4角形、円はみんな同相です。また、コーヒーカップとドーナツの形も同相です。

結び目は端点同志が閉じられたひものことです。3次元ユークリッド空間内で2つの結び目が連続的な変形で移り合うときに「同位」と言い、同じ仲間だと考えます。結び目理論の起源は元素の研究だったそうです。1880年代にKelvinが原子はエーテルが結び目になったものという仮説をたて、元素の一覧を作成する目的でTaitが結び目の一覧表を作成したそうです。今ではエーテルの考えは否定されていて、元素の研究が目的で結び目理論は研究されていません。しかし、数学では結び目は3次元多様体というものと関連しいていて、また、結び目の研究自体にも数学のエッセンスが豊富に詰まっていて、現在でも盛んに研究されているようです。

続いて、最近開発された、結び目理論を応用した知育ゲームの紹介がありました。アンドロイド端末を用いて参加者がこのゲーム試すことができました。ゲームのルールは簡単で、曲線で区切られた領域を選択するとそのまわりにある頂点の白黒が反転していき、最終的にすべての頂点を白にすれば勝ちというものです。このゲームは子供の図形認識能力の向上や高齢者の視空間認識機能のリハビリテーションを目的として開発されているそうです。「領域選択ゲーム」という名前で、スマートフォンのアプリとしてもリリースされているそうです。

幾つかの結び目が絡まった図形を絡み目と言いますが、後半はこの絡み目の分類を例にして数学の研究方法が紹介されました(実際はかなり簡略化されているそうですが……)結び目、絡み目を同位か同位でないかを判定することは難しいそうで、そのために研究者は「不変量」という数学の道具を使うそうです。簡単な不変量ということで、「3彩色可能性」と「絡み数の絶対値」という2つの不変量が紹介されました。この2つの不変量を計算することで、例としてあげられていた絡み目の幾つかを分類しました。不変量で区別できない場合は実際にそれらを連続的に動かして重なり合うかどうか調べるそうです。ここでは2つの不変量を利用しましたが、実際に研究する際はもっとたくさんの不変量を計算するそうです。

今回紹介された2つの不変量は、計算方法はとても簡単ですが、そもそも不変量であるということを厳密に証明するためには、大学の数学科で勉強する高度な内容が使われているとのことです。

数学の研究は、式を計算して結論を得るのだと思っていました。でも、そんなにスマートな物ではなくていろいろ紆余曲折するのだと言うことを知りました。

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