開催報告(第62回)

発生工学と未来

講師 : 加藤 宏一
日時 : 2012年1月20日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


今回は、発生工学に関連するさまざまな知識や技術の進歩の過程や、最近のニュースや新聞記事で取り上げられているトピックスについてのおおまかな説明がありました。寒い中25名を超える参加者があり会場はほぼ満席の状態でした。

核をのぞいた卵細胞に体細胞の核を移植して発生させる体細胞クローン動物の作製はいろいろな動物で成功しており、生産性の向上や基礎研究への寄与が期待されています。ただしヒトについてもどこかで同様の研究がおこなわれている可能性は否定できず、成功したという話もありましたが真偽のほどは明らかではないようです。限られた例ではありますが、この種の試みが治療目的という名のもとに行われているのには疑問を抱かざるをえません。

ES細胞やiPS細胞の研究は、再生医療につながるものとして大いに期待が持てそうです。特にiPS細胞については患者本人の細胞を用いて拒絶反応の起きないオーダーメイドの臓器を作りだせる可能性があり、医療上の価値がとても高いと思われます。他人の臓器をもらって移植しなくてもすむ時代が早く来るといいですね。

ES細胞やiPS細胞を用いることによって、遺伝子を改変した動物を比較的効率よく作り出せることもわかりました。キメラ動物などという寄せ集めの怪物動物を作る技術が、こんなところに生かされているのですね。こちらの場合にもしっかりとリスクを検討して、想定外のことが起こらぬようにコントロールしていかなければならないと感じました。

話の全体を通して、発生工学のみならず分子遺伝学や細胞生物学などいろいろの分野がお互いに関係を持ちながらすさまじい早さで進歩発展していることがわかり、感銘を受けました。参加者の多くが話の内容を理解して興味を持ち、ほぼ満足されていたようです。話の内容が多くてどうしても一方通行になりがちで、もう少し意見交換の時間があると良かったかなと思われます。

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