開催報告(第65回)

タンパク質はすごい
  〜サプリメントのコラーゲンから狂牛病のプリオンまで〜

講師 : 森山 昭彦
日時 : 2012年5月18日
会場 : エル カフェ(ELL Cafe) (西区浄心)


今回は、いつもの「7thカフェ」ではなく、地下鉄浄心駅すぐそばの喫茶店「エルカフェ」が会場で、30人あまりの参加者だった。会場の込み具合もケーキの味も程よい加減であり、町中の普通の喫茶店が会場というのは、何となくサイエンスカフェらしくてよかった。

タンパク質は漢字では「蛋白質」と書くという話から始まった。「蛋」は卵の意味であり、タンパク質とは卵の白味の主成分のような性質を持つ物質のことをいう……少しだけ、なるほど、と思った。タンパク質は20種類のアミノ酸がつながった構造をしていて、いろいろな蛋白質は、それぞれ決まった立体構造をしているので、様々な働きができるのだそうだ。タンパク質の主要な働きの一つが酵素であり、体の中の化学変化がスムーズに進むのはさまざまな酵素のおかげである。筋肉運動もアクチンとミオシンというタンパク質のおかげだそうだ。なんとなく、高校の授業の復習のような気がした。

コラーゲンには特殊なアミノ酸が含まれているので、水をふんだんに蓄えることができるけれど、特殊なアミノ酸なので、消化・吸収されてもそのままでは体の中でのコラーゲン作りには使えないらしい。巷の多くの広告主たちもそのことはわきまえているそうで、潤い肌の原因の一つがコラーゲンだと書かれていても、飲んで美肌に効くとはほとんど書かれていないそうだ。食べてもあまり美肌効果はないのかもしれないが、「効果があるという知人がいるのだけれど」というような質問も会場からあったし、程度はともかくも効果があるという学問的な報告もあるそうだ。摂取のためには料理用のゼラチンが安くてよいという話もされていた。

二つ目の話題は狂牛病のプリオンと呼ばれるタンパク質の話であった。生き物ではないただのタンパク質なのに病原体であり、体内で増えるという話は不思議な感じがした。病原体のプリオンと正常なものはプリオン蛋白質の折り畳み方が違うだけで、正常なプリオンは私たちの体の中にもあるという話であった。また、この病気は、食人習慣のあったフォレ族という民族の間に広まっていたクールーという病気や、年を取って時々発症するというクロイツフェルト・ヤコブ病などと同じだそうだ。自然発症があるということは、狂牛病の国からの牛肉輸入制限だけではこのような病気から逃れられないのかもしれないと思った。「正常な人がこの病気になったときには遺伝しないのでしょうか?」とか、「食べたプリオンは消化されないのですか?」、「消化されずにどうやって体の中に入るのですか?」など、いろいろと質問がでており、興味深い話題であった。

最後に、いろいろなタンパク質の例として、ノーベル賞でにぎわったオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質の話や不凍タンパク質、水中接着タンパク質などの紹介もあり、なるほど、「タンパク質はすごい」と思った。終わってみると終了予定時間を20分も過ぎていた。

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