開催報告(第68回)

野球の技術上達法の解説
  〜速い球を投げ、強い打球を飛ばすには〜

講師 : 太田 和義
日時 : 2012年8月24日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


8月24日、第68回サイエンスカフェが、ナディアパークの7th Cafeにて行われました。今回のタイトルは、「野球技能の上達法の解説 〜速い球を投げ、強い打球を打つには〜」で、30名強の参加がありました。年齢、性別を問わず関心の高い“野球”がテーマであったためか、普段はあまり参加のない、中学生や高校生などの姿も見られました。

今回のお話は、まずスポーツに共通する動作に関することから始まりました。この“共通動作”のポイントは二つあり、一つが「全身の動作連鎖」で、もう一つが「対角螺旋の動き」とのことでした。 最初のポイントでは、投球動作を例に挙げ、下肢→体幹→腕という流れで、動きの連鎖がうまくいって初めて、合理的で力強い投球ができるとの説明がなされました。2番目のポイントについては、同じく投球時の腕の動きについて触れ、体軸を斜めに横切る腕の振りをすること、そして、肘の屈伸と共に内外の捻りを伴った動きをしていることの解説がありました。

野球技能に関しては、「投球」についての話題から入りました。まず正しいボールの握り方の解説があり、投球フォームが五つの段階に分類されることが示されました。そして各段階での注意点、問題点などが例示され、特にゼロ・ポジションで投げることと股関節の柔軟性を高めることの重要性が強調されました。

続いての話題「打撃」では、まずボールとほぼ同じ大きさの道具で、飛来してくる物体(ボール)を打ち返すという野球の打撃の特殊性を説明し、速さ、回転、コースの三つの要素を持つ投げられたボール打つことの難しさが述べられました。次に、“速球”に対処する困難さを克服するための「予測制御」について説明がありました。さらに、ドア・スイング、テーク・バック、(構えの際のバットの)トップの位置などについて、話題提供者のミニバットを使っての動作付きの詳しい解説がありました。

最後に、話題が「投球障害」に進み、まず身長がぐんぐん伸びる成長期にスポーツ障害が起りやすい理由や怖さなどについての話がありました。さらに、全力投球時の肩への負荷が体重の0.8〜1.5倍も掛ることから、日本臨床医学会から“投げ過ぎ”の目安が示されていることや、不合理な力の使い方からオーバーユースが起こる理由についての解説がなされました。また、野球肘やリトルリーガーズ・ショルダーなどの原因や対処法などの説明も加えられました。

投球障害の話題の前後に休憩を兼ねて「プロ野球記録クイズ」と題した珍しい記録問題が10問出され、驚くべき記録の内容解説に多くの参加者は感心しきりでした。

運動連鎖について詳しく説明してほしいという野球少年(小学生)を息子に持つお母さんからの質問や、球種は多い方がよいのかという野球少年(中学生)からの質問があり、身振り手振りを交えての説明がありました。

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