開催報告(第74回)

インフルエンザウイルス研究の最近の話題

講師 : 鈴木 善幸
日時 : 2013年3月15日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


インフルエンザウイルスは単純な生き物のようにみえますが、なかなかどうしてまだまだわからないことだらけです。たとえば、このウイルスのゲノムは8本の分節にわかれていますが、それぞれのウイルス粒子にはきれいに8種類の分節が1本ずつ含まれているようです。どのようにしてこのようなことが可能になるのでしょうか。また、トリインフルエンザウイルスはヒト-ヒト感染するようになるのでしょうか。実験室ではついにフェレット-フェレット感染するウイルスがつくられました。これはどのようにして可能になったのでしょうか。今回のサイエンスカフェでは、このようなインフルエンザウイルス研究の最近の話題についていくつかを紹介しました。

今回のサイエンスカフェは、3部構成でお話しました。第I部が生物進化の基礎、第II部がインフルエンザウイルスの基礎、第III部が最近の話題です。第I部では生物が38億年もの間途切れることなく命をつなぎながら遺伝情報を受け継いできたこと、しかしその遺伝情報は少しずつ変化してきたために生物は進化してきたことをお話しました。第II部ではウイルスは細菌とは違うということ、インフルエンザウイルスはゲノム分節の組換えを起こしながら高速に進化していることをお話しました。第III部では高病原性H5N1トリインフルエンザウイルスは5ヶ所アミノ酸変異が入るだけで意外に簡単にフェレット-フェレット感染するようになることから、ヒト-ヒト感染するようになる可能性もあると考えられるということを紹介させていただきました。

スライドを108枚用意したのですが、演者の不手際により1時間55分の間に96枚しか紹介できず、インフルエンザウイルスゲノムのパッケージングのお話をすることができませんでした。インフルエンザウイルス研究の最近の話題という題目だったにもかかわらず、最近の話題二つのうちの一つを端折ることになってしまいまして、お忙しい中ご参加下さいました皆様には深くお詫び申し上げます。それにもかかわらず皆様には熱心にお聴きくださり、ご質問もたくさんいただきまして、話題提供者として楽しい時間を過ごさせていただきました。この場を借りて深くお礼申し上げます。

鈴木 善幸(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

[戻る]