開催報告(第75回)

量子もつれとは何か

講師 : 徳光 昭夫
日時 : 2013年4月19日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


第75回サイエンスカフェは「量子もつれとはなにか」という題目で、徳光が担当しました。参加者は36名でした。

量子力学の法則は、半導体に代表される現代生活を支える技術をもたらしました。ところが、その基礎となる法則は、日常生活で培われた直感とはかけ離れたものです。たとえば「観測」すると対象に影響を与えて状態を変えてしまったり、離れた地点での測定が互いに関係してしまう「量子もつれ」と呼ばれる現象を予言しました。近年の実験技術の発達によって、これらの奇妙な性格が事実だと確かめられてきました。今では量子の奇妙さをむしろ積極的に利用した、量子情報や量子計算の技術が現在盛んに研究されています。今回は、量子論の基本的な考え方と量子もつれについて、光を例として解説しました。

はじめは量子論の歴史と光の古典的考え、そして光の粒子的側面である光子の概念を説明しました。そして偏光板を3枚重ねすることで、状態の重ね合わせの概念と、測定による状態のジャンプという考え方を説明しました。休憩後、「量子消去」とよばれる、レーザーの干渉性を一度消してから復活させる演示実験を行いました。偏光板の向きによって干渉が現れたり消えたりするのが不思議でした。その後、「量子もつれ」とよばれる状態を、二つの光子の偏光状態の重ね合わせとして説明しました。もつれた状態では、一方の光子を測定すると他方の光子の状態が測定しなくても決まってしまいます。これを量子テレポーテーション、量子計算のゲートとして利用する方法を紹介して、今回のお話は終了しました。

状態の重ね合わせという考えは日常経験には現れないため理解が難しかったようで、終了後、質問が何人かから寄せられました。いくつかの質問はその場で答えられましたが、すでに時間オーバーで会場が終了したため、残りの質問には会場外のベンチで答えることにしました。熱心な質問が、その後一時間あまり続きました。

徳光 昭夫(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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