開催報告(第76回)

自転車(運動)の科学
  〜健康づくりから競技まで〜

講師 : 石 鉄雄
日時 : 2013年5月17日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


今回のサイエンスカフェでは、歩行(ウォーキング)の次に身近な運動と言える「自転車(運動)」を題材に、その生理学的・生体力学的特徴、自転車運動による健康づくり効果、さらには競技力をつけるにはどのような乗り方をすればいいかなどについて話題提供者の知見を元に紹介しました。

最初に、日本人の死因と要介護の原因についてお話し、動脈硬化予防と脚筋力の維持に結び付く運動を行って初めて「健康づくり」を進めたことになることを伝えました。アテローム性動脈硬化除去手術、心臓冠動脈の梗塞による虚血状態などの動画を提示し、それらの進行がメタボ検診項目(肥満、脂質異常、高血圧、高血糖)と深く関わることを述べ、日常的にウォーキングを実践している人の血液検査の結果が思ったほど良くないこと、その原因が歩行中の運動の強さが十分でないことを具体例で紹介しましたが、これまで歩行を中心に健康づくりを実践してこられたであろう参加者の方々は若干ショックを受けたようでした。

次に、少しの勾配で運動の強さが大きく変化するという自転車の力学的特徴を示し、自転車で走る際の辛さ(しんどさ)は、「息ハアハア」のレベルではなく、脚の疲れと関係することを紹介しましたが、高齢の方々には少し難しかったかもしれません。

自転車の運動効果の具体例として、次に、普段から積極的に自転車に乗っている自転車通勤者、高齢自転車愛好者の自転車走行中の運動強度(心拍数)が歩行に比べて大幅に高いことを具体的に示しました。その方々自身はそのような高運動強度の走行を「楽しい」と感じながら実践していることを強調し、そのような乗り方は、クロスバイクやロードバイクなど、変速ギア枚数の多い高機能自転車にサドルを高くして乗ることで可能になること、普段から高強度走行を実践しているこれらの方々の血液検査結果や体力レベルは歩行を中心に健康づくりをしている人に比べて良好な状態にあることを紹介しました。

最後は、長時間高い速度で走り続けるための自転車競技者のペダリング技術を紹介しましたが、自転車競技らしき人は見当たらず、今回の参加者の皆さんには難しかったようです。

終了後は、室内用の自転車運動用器具も同じ運動効果があるのか、ジムでウォーキングベルトを歩いているが自転車の方がいいか、週に1日だけ長時間走っているが効果は期待できるかなど、自転車通学をしているが脚が太くならないかなど多くの質問があり、話題提供者も今後のヒントを沢山得る有意義な機会となりました。

石 鉄雄(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

[戻る]