開催報告(第78回)

生まれと育ち
  〜遺伝情報の整理と活用〜

講師 : 田上 英明
日時 : 2013年7月26日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


私たちは父親と母親から1セットずつの遺伝情報をもらって、また次代に受け継いでいきます。1個の受精卵から約60兆個の様々な細胞に分化しても基本的に遺伝情報はすべて同じです。どの情報をいつ、どこで、どのように使うか、もしくは封印しておくかを緻密に調節することが重要なのです。おかしくなって暴走すれば病気になったりしますし、リセットできればiPS細胞にもなり得るのです。

今回のサイエンスカフェでは、「生まれと育ち」というタイトルで、メンデルの遺伝法則からエピジェネティクスという最近の研究まで話題提供しました。

まず、「生まれつき決まっているもの(遺伝子で決まるもの:遺伝的要因)」や「育ちで決まるもの(遺伝子だけで決まらないもの:環境的要因)」とはどういうものかを、参加者の皆さんに考えていただいた上で、遺伝子とDNAの違いについてお話しました。実際に、サケのDNAを可視化することで物質としてのDNA分子を実感できたと思います。次に、遺伝子発現のON/OFFについて電気のスイッチと比較することで、生物の巧妙な環境に対する応答のしくみについて理解を深めました。後半では、DNAの配列情報に依存しないエピジェネティクスと言われるしくみについて、三毛猫や一卵性双生児を例にしてお話しました。明らかになってきた遺伝情報の整理と活用法の一端に触れる機会になったものと期待しています。

タイトルが良かったという意見もいただきましたが、関心の高い話題だったようで45名の参加者でした。サイエンスカフェなので、できるだけリラックスした雰囲気でサイエンスを楽しめるように心がけて、いつでも質問票を出せるようにしたり、途中に簡単な実験を入れたりしましたが、会場から活発に意見や質問が出て終了時間が気になるほどでした。終了後も様々な質問があって話題提供者としてはうれしい反響でした。アンケートも好評でしたが、「少し専門的すぎたのではないか」という意見や、本人は気付かないままカタカナ語や説明無しに専門用語を使っているという指摘もありましたので、以後気をつけたいと思います。テーマだけにとどまらず鋭い質問や意見もいろいろ出て、楽しく盛り上がったサイエンスカフェでした。

田上 英明(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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