開催報告(第80回)

遺伝子を運ぶ染色体の不思議

講師 : 中山 潤一
日時 : 2013年9月20日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


私たちのからだを作り上げるためにはたらく遺伝子は、細胞から細胞へ、また親から子供へ受け渡されます。細胞が分裂するときに、顕微鏡でそのようすを観察すると、「染色体」とよばれる構造を見ることができます。染色体はたんに遺伝子を運ぶためだけの乗り物ではありません。染色体は、生物の多様性を生みだすはたらきするほか、私たちの性の決定に関わり、さらには私たちの病気にも関係します。

今回のサイエンスカフェでは、「遺伝子を運ぶ染色体の不思議」というタイトルで、染色体の構造からその数、また性や病気との関わりについて話題提供しました。

まず、染色体が細胞分裂に際して見られる構造体であること、遺伝子を細胞から細胞へ、また親から子供へ受け渡す重要な構造体であることを話しました。DNAが染色体という形に折り畳まれる際、いかにコンパクトに折り畳まれているか、簡単な計算や例を示すことで参加者の皆さんに考えてもらいました。次に、染色体は遺伝子を受け渡す重要な構造である一方、進化的には形を変えやすい不安定な一面を持ち、種分化に寄与してきた可能性を紹介しました。後半では、なぜ性が存在するのか、性が染色体によってどのように決まるのか、さらに劣化しつつあるY染色体というような最近の話題を紹介しました。最後に、染色体に関わる病気や遺伝病の話を紹介しました。今回のサイエンスカフェで染色体というものが身近に感じられるようになったと思います。

染色体というタイトルからどの程度の参加があるかの不安がありましたが、会場いっぱいの参加者となりました。話の内容を4つの話題に分け、その話題ごとに区切って質問をしてもらうという工夫をしたため、活発な質問が多数受けられたのはとても良かったと思います。質問の内容から、参加者が高い関心を持って染色体のことを考えてくれた様子が窺えました。話題が多岐に広がっていた点、また用意したスライドがやや多かったため、一部の参加者の理解が追いつかなかった点があったように思われました。これらの点については次回以降改善していきたいと思います。

中山 潤一(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

[戻る]