開催報告(第84回)

近赤外光で食の安全と品質を守る
  〜「知の拠点あいち」の取り組み〜

講師 : 松村 憲明 氏/片山 詔久 氏
日時 : 2014年1月17日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


食品の安全・安心は、我々の健康にも影響しかねない重要なテーマです。仮にそうでなくても、例えば毛髪が混入したお惣菜を食べたいと思う人はなく、店頭に並べばそのメーカーは甚大な損害を受けます。一方で、もし「美味しさ」を科学的に検査して品質保証できれば、生産側も消費者も喜ぶ「ブランド食品」として付加価値をつけて販売できます。今回は、愛地球博跡地の一角にある「知の拠点あいち」で開発が進められている、食品中の異物検出を目的とした全数検査装置について科学技術交流財団の方にお話いただいたのち、各大学や研究機関で研究され一部実用化されている、近赤外法を応用した果実・牛肉・鮮魚などの品質検査について話題提供しました。

これまでのサイエンスカフェとは違い、今回は名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科の片山に加えて科学技術交流財団の科学技術コーディネータの2名がそれぞれの話題提供を行いましたが、いかがでしたでしょうか。まず、身近な言葉になりつつあるも科学的なことはあまり知られていない「近赤外光」について、赤外線リモコンを使った実験を交えながら簡単な解説を片山がした後、科学技術交流財団の松村憲明コーディネータから、「知の拠点あいち」で進められている重点研究「食の安心・安全技術開発プロジェクト」の内容と進捗状況についての紹介と話題提供がありました。このプロジェクトでは、国のバックアップも含め愛知県の予算により、愛知県の主要産業の一つである食品産業や農業に貢献し、市民の安全のための技術開発が進められているとのことでした。具体的には、近赤外法に限らずいろいろな手法を組み合わせることで、食品という多岐にわたる対象物について、農薬・固形異物(金属と非金属)・微生物などの様々な異物に対応できるものを目指しているとのことでした。

最後に、近赤外法を利用した「食の品質保証」に関連した最新の研究の数々を紹介しました。青果物をはじめとして「飛騨牛のブランド化」や水産物の鮮度評価など、あらゆる方面での研究が進んでいることを知っていただけたと思います。また、受付時に参加者ご自身がそれぞれ「一番おいしい」と思うミカンを手にし、休憩時間にご自身の手で近赤外「光センサ」を使って糖度と酸度を測定する体験は好評で、非破壊全数検査の一角を感じていただけたと思います。

参加者はやや少な目でしたが、関心の高い質問も多く、充実したサイエンスカフェになったと感じています。また、「知の拠点あいち」の公開デーに関心を持たれた方もいらっしゃり、「食の安心・安全」が身近で重要な関心事であることを再認識いたしました。

片山 詔久(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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