開催報告(第91回)

心の進化

講師 : 村瀬 香(名古屋市立大学准教授 / 専門:行動生態学・生態情報測定学)
日時 : 2014年9月19日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


 今回のサイエンスカフェ in 名古屋では、心の進化についてお話しました。沢山の市民の皆様が参加して下さいました。ここに深くお礼申し上げます。

 これまでは、心がどのような働きをするのか、という研究が数多くなされてきました。しかし、そのような働きがなぜ獲得されてきたのかについては、あまり注目されていませんでした。そこで今回は、宗教、心理学、社会科学などの、これまでの研究分野の観点だけでなく、行動生態学という研究分野の研究成果をいくつかご紹介させて頂きました。行動生態学では、ヒトは他の生物と同様に、主に適応的な進化の過程によって作られた、と考えます。この行動生態学の観点から、ヒトの心がどのように進化してきたのか、どうすれば人類の課題を乗り越えられるのか、といった事をお話させて頂きました。

 最初に、心が身体に与える影響に関する論文をいくつか紹介させて頂きました。次に、行動生態学の基礎をお話させて頂きました。次に、心の進化を理解するために必要な、「自然選択」と「遺伝的浮動」という概念について説明させて頂きました。
 中盤では、環境と遺伝のうち、どちらが心にとってより重要かを考えました。その中で、双子の研究について紹介させて頂きました。ここでは、「推定遺伝率」の計算方法を簡単にお話させて頂きました。双子研究の結果、「外向性や柔軟性」は、「身長や体重」に比べると、遺伝の効果が相対的に低いことが分かっています。心は遺伝と関わりがありますが、本人の心のあり方にも、十分に影響を受けることをお話させて頂きました。

 後半には、「性選択」と「人類の進化」についてお話させて頂きました。ここでは、「繁殖成功度」や「血縁度」について説明させて頂きました。ここでは、「血縁度」の計算方法を簡単に説明させて頂きました。

 最後に、人が抱える様々な課題を、根源的に解決する方法とはどのようなものか、についてお話させて頂きました。

 少し複雑なお話もあったかと思いますが、会場の皆さんが最後まで熱心に聴いて下さったり、沢山質問して下さったりしたので、私も有意義で楽しい時間を過ごす事が出来ました。重ねまして、ここに深くお礼申し上げます。

 サイエンスカフェ in 名古屋終了後、ご質問やメールでのお問い合わせが多かったトピックについて、参考になりそうな一般書籍を下記に記します。お役に立てれば幸いです。

  1. 人間関係の改善に関するもの:「女子の人間関係」水島広子(著)
  2. 心と病気に関するもの:「身体が「ノー」と言うとき」ガボール・マテ(著)
  3. 動物生態学に関するもの:「共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること」フランス・ドゥ・ヴァール(著)



村瀬 香(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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