開催報告(第94回)

やさしい生命と分子間力の話

講師 : 櫻井 宣彦 氏(名古屋市立大学システム自然科学研究科・准教授 / 専門:生物無機化学・構造生化学)
日時 : 2014年12月19日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


生体分子が生体を形作ったり,その機能を発揮したり,あるいは制御するにはその分子と分子の間に,何らかの工夫が必要です。今回のサイエンスカフェではその仕組みの一端を担う分子間力を取り扱いました。

まずは導入として,分子間力を知ることが何の役に立つのか,医薬品開発を例にしました。さらに理解のし易さのために分子間力の便宜的な分類を行いました。次にファンデルワールス力と水素結合について,その力の源についての話をしました。そして,水素結合がタンパク質の高次構造のつくるために必要な事と酸素呼吸鎖末端酸化酵素のプロトン トランスファーに必要な事について話をしました。さらに,疎水性相互作用の源について,その駆動力がエントロピーの増加であることを説明し,例として細胞膜の構造について話をしました。最後にカリフォルニアのジャイアント セコイア『ジェネラル シャーマン』を例にしてその水のくみ上げの機構の分子間力の役割について話をしました。

当日は若い(おそらく小,中学生)方からかなりのご年配の方まで老若男女,様々な年代の人が集まっていただけました。経験的には科学好きの方が集まられたのだと思います。レベル的には高校卒業から大学の初学年の程度の内容なのですが,おそらく難解に思われた方も多かったでしょう。一般人の科学的教養の平均は中学校卒業程度とも言われていますので,どのあたりをターゲットに話を進めるかについては永遠に解決しない問題だろうと思います。構成として基礎事項から例へと話を進めたのですが,逆の構成の方が一般の方には受け入れやすかったかも知れません。要旨で示した水和エネルギーについては時間の関係上,割愛させていただきました。知りたかった方には申し訳ありませんでした。


櫻井 宣彦(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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