開催報告(第98回)

ネット社会の落とし穴
~情報流出と行動プライバシー問題~

講師 : 宮原 一弘 氏(名古屋市立大学システム自然科学研究科・講師 / 専門:教育工学・e-Learning・情報教育)
日時 : 2015年4月17日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


 インターネットが私たちの身近なインフラとなってかなりの時間が経ち、今や“ネット”で出来ないことはないと思えるくらい実社会に浸透しています。電子メール、Webによる情報収集はもちろん、カードでショッピング、新幹線の予約、ネットバンクで振込み、病院の診療予約…便利なことが増えました。しかし、これらはすべて私たちのプライバシーの記録としてネット上の“どこか”に残ります。もし、そういった情報が漏れたとしたら…別々であるはずの情報が結び付いてしまったら…インターネットであらゆるものがつながる時代。今回のサイエンスカフェではネット上でのプライバシーについて話題提供させていただきました。

 まず、日本で使用されている(スマートフォンを除く)携帯電話には、キャリアによって付与されている契約者固有IDと呼ばれるIDがあり、これを元にしてサービスを利用するための認証が行われているという「かんたんログイン」を紹介しました。複雑なユーザー名とパスワードを携帯電話のテンキーから入力しなくても済むため、利用者からは喜ばれているようです。しかし、こういった固有IDの利用については、潜在的なセキュリティとプライバシーの問題が指摘されており、例えば、あちこちのサイトに散在している一見関係のない情報が固有IDをキーとして結びつき、個人の特定(行動把握)やプライバシー情報の流出につながる可能性が指摘されています。実際、規模は小さかったものの宅配便のサイトで個人情報の流出事故があったことを紹介しました。

 続いて話題としたスマートフォンの場合には、インストールしたアプリが個人情報、端末情報、電話帳データといった端末内のあらゆるデータにアクセスが可能となるため、より深刻な事態を招く可能性についてお話ししました。実際に大規模な個人情報流出事件が複数件起きており、起訴に至らなかったものの首謀者が逮捕されたこともありました。こういった被害に遭わないためには、インストール時にアプリが要求してくる権限(アクセス許可)に注意する必要があります。

ここまでの話題は、ネットの中での行動プライバシーについてでしたが、最後に、現実の行動が漏れているかもしれないという話をしました。それは、誰もが持っているであろうICカード乗車券やお店のポイントカードが元となります。いつ、どこへ行ったか。毎日○○駅と××駅を往復している。週末は△△△ストアで買い物をしている。こういった行動・購買履歴が意識せぬ間に蓄積され、もしかすると誰かに覗き見されているかもしれない…そんな社会がすでに始まっているのです。


宮原 一弘(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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