開催報告(第99回)

私たちの暮らしを支える植物の能力

講師 : 木藤 新一郎 氏(名古屋市立大学システム自然科学研究科・教授 / 専門:植物生理学・分子生物学)
日時 : 2015年5月15日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


 植物の葉の細胞内には、数十億年前に共生した光合成細菌が姿を変えた葉緑体が含まれています。葉緑体は、太陽から届く光のエネルギーを利用して、水と大気中の二酸化炭素から私たちが生きていく上で必要な酸素と糖を作り出しています。今回のサイエンスカフェでは、光合成と呼ばれる植物が糖を作り出すしくみと、光合成で作られた糖が私たちの暮らしを支えている実態についての話題が提供されました。

 はじめに、光エネルギーが葉緑体のチラコイド膜に存在するクロロフィルに吸収されてATPやNADPHなどの化学エネルギーに変換させる反応と、それら化学エネルギーを利用して葉緑体のストロマで二酸化炭素が糖に固定される反応の説明がありました。それら光合成の反応過程に関する話は、専門的で少しわかりづらい部分もありましたが、写真やイラストを使って丁寧に説明されていたので参加者も理解しようと聞き入っている様子がみられました。その後、光合成産物である糖をもとにデンプンや細胞壁、さらにはアルカロイドやフラボノイド、テルペノイドといった二次代謝産物が作られるしくみや、それらが私たちの暮らしに如何に役立っているかの紹介がありました。主食として食べているお米のデンプンが光合成で作られていることや、そのデンプンを材料にお酒や味噌・醤油などの調味料が製造されていること、更には植物が二次代謝で作る低分子化合物が医薬品や香料として役立っていること等の説明がありました。それら後半の話題は、食品や日用品など身の回りに存在する物の話でもあることから、皆さん興味深く聞かれていました。


 今回の参加者は40名弱でした。講演時間が押したため質疑応答の時間が十分に確保できませんでしたが、講演時間終了後も参加者と話題提供者の間で活発な意見交換がしばらく続いていました。今回のサイエンスカフェは、市民の方々が植物の重要性について再認識する良い機会になったのではないかと思います。


木藤 新一郎(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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