開催報告(第100回)

長さ、面積、フラクタル図形の不思議な世界

講師 : 能登原 盛弘 氏(名古屋市立大学システム自然科学研究科・教授 / 専門:数理生物学、集団遺伝学、分子進化)
日時 : 2015年6月19日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


 自然界には樹木の枝、複雑な海岸線、稲光、雲など通常の幾何学では捉えることができない微細で複雑な形が満ちています。これらの形を捉える一つの方法としてフラクタル幾何学という分野が1977年にマンデルブロによって考えられました。また日頃使っている長さ、面積などの量は突き詰めてゆくといろいろ不思議なことが起こります。さらにフラクタル図形には長さ、面積では測れないある種の量を持っていることが分かります。まず通常の方法では面積が測れないハルナック図形について紹介され、その困難を解決するルベーグ測度について簡単に紹介されました。さらに、無限にも数えられる可算無限と数えられない連続無限など、日頃使っている数の不思議についても紹介されました。複雑な計算は無く、論理的思考のみによって話が展開されましたが、日常では使わない論理でもあり、結論に戸惑いを感じられたかも知れません。



フラクタルの中に自己相似フラクタルという図形があります。アファイン変換と呼ばれる相似な変換を縮小しながら繰り返し行うことにより作成されるものですが、スギの葉、四季の樹木、シダの葉などの微妙な形がこの変換を用いて作成されることが紹介されました。さらにフラクタル図形の長さ、面積などを測ると0あるいは無限大と長さ、面積では捉えきれないことがしばしばあります。長さ、面積に代わりハウスドルフ次元あるいは相似次元と呼ばれる概念を利用すると、フラクタル図形にある種の量を定義することができることが説明されました。ただし、その時の次元は、例えばコッホ曲線と呼ばれるフラクタルは1.26…次元、シェルピンスキーのギャスケットは1.58…次元と不思議な次元の図形としてとらえられることが示されました。参加者は43名で中高年の参加者が多く、数学的内容でしたので難しいと感じられた方が多いようでしたが、説明の途中でも多くの質問が出され自然界に隠れている不思議な数学の世界を感じていただけたのではないかと思います。


能登原 盛弘(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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