開催報告(第101回)

えせ科学にだまされないために

講師 : 森山 昭彦 氏(名古屋市立大学システム自然科学研究科・教授 / 専門:生化学、タンパクの分子情報学)
日時 : 2015年7月17日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


 コラーゲンは、水酸基のついた特殊なアミノ酸を豊富に含む3重らせん構造であることから、ヒドロゲルとしての性質をもつというような話から始め、コラーゲンが体の中ではどのようにして作られるのか、食べたコラーゲンはどのように分解されて、体内で利用されるのか(されないのか)、などについて説明しました。この「コラーゲンを食べてもあまり効果を期待する根拠がなさそうだ」という主旨の説明に対して、コラーゲンサプリを実感している方々のなかには、納得されない方もおられるようでした。コラーゲンを食べることに、何らかの効果がある可能性は否定できませんが、効果ありとする科学的な証拠が乏しいことはたしかです。



 コラーゲンに限らず、いろいろなサプリが売られており、これからも新製品が登場してくるでしょう。私たちが、様々な商品のすべてに対して科学的に理解をする事は不可能なので、国による認可や国への届け出(特保、機能性食品)等が参考になることを紹介しました。 さらに、メタボリック症候群と肥満について、国際基準と日本基準の違い、肥満度と死亡率の調査結果などを引用し、国や学会が決めた基準の意味などについて考えてみました。

 つぎに、「えせ科学をひとはどうして信じてしまうのか」、そこに使われている手法のいくつかを紹介しました。「隠された前提」、「チェリーピッキング」、「誤解を誘導する比較」、「確証バイアス」、「バーナム効果」「無知に訴える論証」と「悪魔の証明」などについて実例を含めて説明しました。知らず知らずのうちに、説明者の都合のいい話を信じてしまう理由が少しは理解していただけたのではないかと思います。

 自然科学では証拠に基づいて論理的に考えることが重要であることから、後半は、相関関係と因果関係の違いや、そこに潜んでいるかもしれない交絡因子について、コーヒーと膵癌の話や、喫煙と肺癌の関係を例にして説明をしました。
 最後に、不十分な証拠しかなくても何らかの予測をしなければならない現実もあるということで、狂牛病が幸いにして流行しなかった例や、科学にイデオロギーが介入していた例として「ルイセンコ事件」を取り上げました。

 会場には、「食と健康」についての話を期待してこられた方もおられ、必ずしも皆さんの満足のいく話題提供ではなかったかもしれません。しかし、「新たに購入しようとおもっていたのだけれど、再考してみます。」と言われる方や、お礼のメールを下さる方もおられ、コラーゲンやえせ科学に対する理解が少しは進んだのではないかと思います。


森山 昭彦(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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