開催報告(第104回)

「植物は偉い」
−秘められた植物のスーパー能力−

講師 : 湯川 泰 氏(名古屋市立大学システム自然科学研究科・教授 / 専門:分子生物学、RNA生物学、転写制御)
日時 : 2015年11月20日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


美しい緑の森や草花を見ると何となく癒されますが、実は植物はそれだけではありません。今回のサイエンスカフェでは、植物が持つスーパー能力の数々を、「生存戦略」、「合成力」、「適応力」、「潜在力」に焦点を合わせてご紹介しました。

 まず始めに、今回のテーマにあるように何故「植物が偉い」のかについて考えてみました。手始めにわかりやすい例をあげてみました。世界一大きな木は、米国のセコイヤ国立公園にあるジャイアントセコイヤで「シャーマン将軍の木」と呼ばれるものです。高さはおよそ84メートルで、同公園内にはもっと高い木もありますが、この木は地球上で最大の体積をもつ生物です。また、最も長生きな木は、スウェーデンにあるノルウェー・スプルースという種類の木です。その樹齢はおよそ9550年で、地球上で最も長寿な生物でしょう。このように、我々が逆立ちしたって足元にもおよばない特徴を植物は発揮します。このように、誰にもできない能力のことを、我々は普段「超能力」と呼びます。つまり、植物は超能力の塊なのです。

 そこで次に、他の植物の超能力を紹介していきました。巷では、2020年の東京オリンピックまでに水素社会の実現が目指されています。つまり、化石燃料一辺倒のエネルギー消費社会から脱し、水素を活用したエネルギーの多様化社会へシフトしようとするものです。しかし、現在利用可能な水素は石油や天然ガスから作られますから、それではあまり目的にかないません。しかし、植物は光合成の明反応によって、いとも簡単に水分子を酸素分子と水素分子に分解することができます。化学の分野では、世界的に人工光合成の研究が盛んに行われていますが、実現はできていません。植物の能力は恐るべしなのです。

 それにしても、我々にできて植物には決してできないことがあります。それは、動けないということです。しかし、動けないことが植物にとっては欠点なのでしょうか?実は、植物は動かなくてもへっちゃらな生きものなのです。何よりも、動かず自分で栄養を作り出すことができ、しかも我々動物にその栄養を分けてくれます。全く懐が深いのです。では、何故このような生物が、地球上に現れたのでしょうか?生物が生き延びるために、競争し、だまし合ううちに、ときに協力関係を結び、ときに漁夫の利をえて、自然に適応してきた結果なのでしょうということを、説明しました。

 会の最後には、参加者からの質問を多数いただき、植物の能力について尽きない話し合いができました。参加していただいた皆さんは、植物、そして生きものが本当に好きなんだなと実感させるサイエンスカフェとなりました。


湯川 泰(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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