開催報告(第105回)

自分と他人をどう区別する?
~行動的特徴に基づく生体認証~

講師 : 渡邊 裕司 氏(名古屋市立大学システム自然科学研究科・准教授 / 専門:知能情報学、情報セキュリティ)
日時 : 2015年12月18日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


 パソコン、スマホ、銀行ATMなどで使われる「生体認証」は身近になったセキュリティ技術の一つですが、どのような種類があるのでしょうか? また、どうやって自分と他人を区別するのでしょうか? 今回のサイエンスカフェでは、私たちの研究の紹介も含めて生体認証について話題を提供させていただきました。

 話の前半では、指紋や静脈や顔なども含めて様々な生体認証について概要と動向を紹介しました。生体認証に関する最近の記事や市場規模の推移グラフも示しながら、生体認証が広く関心を持たれつつあることを実感していただきました。また、認証に使われる生体特徴(指紋など)は「モダリティ」と呼ばれ、身体的特徴と行動的特徴の二つに大きく分類されます。各モダリティの比較、モダリティ別の市場規模、国際会議でのモダリティ別の論文数などを話しました。

 後半では、まずスマホにおけるタッチ操作のデータ取得実験を行い、作成したアプリを実際に使っていただきました。そして、私たちの研究事例を含めながら、自分と他人を区別する生体認証の仕組みについて解説しました。私たちは、スマホにおいて指紋や顔ではなく画面の触り方や歩き方など行動的特徴に基づく認証を研究しています。生体認証の仕組みで重要な処理の「特徴抽出」と「類似度計算による照合」に対して、私たちの研究の具体例で説明しました。その際に、最近の三度目の人工知能ブームのもととなる「ディープラーニング」にも触れました。

 話の中で取り入れた質問に対して、今回はWebアンケートで参加者から答えを集めることを試行しました。しかし、直前に急遽作成したため、配布資料にアンケートのURLを記載できず、話の始まりから参加者を混乱させてしまったことは大きな反省点です。また、そのアンケートの回答にもありましたが、スマホがない方には実験の間が手持無沙汰でありました。途中ではアプリの簡単な説明だけを行い、全ての話が終わった後に実験を行えば良かったといえます。なお、Webアンケートと実験に際して、手伝っていただいた私の研究室の大学院生と実行委員の方々に深く感謝いたします。

 年末のご多忙の中にも関わらず50名弱の方にご参加いただきました。話の途中、実験の間、話の終了後にも多くの方から質問そしてアイデアをいただき、生体認証を含めて情報セキュリティは関心の高い内容と実感しました。


渡邊 裕司(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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