開催報告(第109回)

暮らしの中での科学と統計のリテラシー
〜それは科学ですか、それは正しい統計解釈でしょうか〜

講師 : 片山 詔久(名古屋市立大学・准教授 / 専門:物理化学)
日時 : 2016年05月20日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


 今回のテーマは、日常生活の中にみられる科学や統計を正しく理解して、ニセ科学に騙されないような教養を身につける。昔でいう読み書きそろばんのように、現代に生きていく上で必要な科学と統計のまつわる基礎知識のうち、誤った情報や不十分な説明が見うけられるいくつかの事例を話題提供させていただきました。リテラシーとして正しく伝わったかどうか心配な部分もありましたが、ご参加の皆さまに書いていただいた「感想」を拝見し、とりあえず安心しております。

 過去にこのサイエンスカフェに参加いただいた方にとっては、プロジェクタを使用せず配布資料をもとに進めていった今回は、少々勝手が違っていたかもしれません。また、皆さまにクイズやアンケートなどを通して、積極的に議論に参加いただく工夫をいたしました。まずは「科学的思考力判断テスト」に挑戦していただき、科学的に事象を理解し明らかにすることの難しさを感じていただきました。実は、これは私が大学の教養科目で担当している講義でも毎年行っているのですが、「悪魔の証明」とあわせてニセ科学を商売に利用する際のポイントであり、論理的な考えを持つトレーニングにもなります。

 つぎに、「水からの伝言」「マイナスイオン」「水素水」という、いわゆる「水商売」とよばれる3つの問題を取り上げました。「水に『ありがとう』と声をかけるときれいな結晶ができる」という「水からの伝言」は、現役大学生と比べ今回ご参加の多くの方がご存じであり(ただし、科学的でないことをちゃんと理解されている)、この問題がいかに広がりを持っていたかを再確認しました。また、「水素水」に関しては昨今の関心が非常に高く、会場からも多くの質問がありました。結果的に時間をかけて議論でき、「売り文句」に惑わされることなく、科学的な部分とまだ明らかになっていない部分を正しく理解する重要性を、お伝えできたと思います。

 続いて、「電子レンジの原理」「緊急地震速報の仕組み」「ホメオパシーとプラセボ」を話題に取り上げ、専門家の本や公的なWEBサイトにも科学的な誤りや不十分な点があることを紹介しました。地震に関しては、いわゆる伝説や迷信などを含めた紹介をしようと用意していましたが、時間的な制約とあまりに非科学的な話題なので割愛しました。会場での挙手やアンケートから、今回参加者いただいた多くの方は既にある程度の科学リテラシーをお持ちの方のようでしたので、このような話題の展開で良かったと思っております。また、プラセボ効果についてはもっと詳しく解説したかったところでしたが、有効成分がなくても治癒が生じることが示され、マイナスイオンなどの誤解につながっていることを理解いただけたかと思います。

 さらに、「グラフの軸」「3D円グラフ」「相関関係と因果関係の混同」といった統計データの扱い方やその表現方法の問題点を指摘いたしました。「立体グラフ」や「相関関係と因果関係」の問題については反響も大きく、このような機会を通じてもっと広めていく必要があると感じました。

 最後に、そのほかの話題と皆さんからの質問などにお答えしましたが、たいへん多くのご意見をいただき充分な時間がなく、せっかくお書きいただいた内容に答えることができず申し訳なく思っております。是非、今後のサイエンスカフェや他の機会に、新たな話題とともにお話しできる機会を設けたいと考えております。


片山 詔久(名古屋市立大学システム自然科学研究科)

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