開催報告(第118回)

老いと音声コミュニケーション

講師 : 中村 篤 氏(名古屋市立大学システム自然科学研究科・教授 / 専門:音声言語処理)
日時 : 2017年03月17日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


 人間は「社会的な動物」と言われており、地上に生きる数多の種の中でも例外的に高いコミュニケーション能力を備えています。その中心を担うのが音声であり、音声を知ることは人間自身を知ることでもあります。今回のサイエンスカフェでは、「老い」によって音声を操る能力が失われていく、いわば「音声喪失」の過程に焦点を当ててお話をさせていただきました。

 具体的には、老人性難聴のメカニズムや、認知症高齢者の音声コミュニケーション能力など、参加者の皆さんが、ご自身の、あるいはご家族のこととして、身近に感じられる話題を取り上げてみました。

 例えば、老人性難聴の症状など、個別には、既に知っていることであっても、人間の聴覚、すなわち「聞こえのメカニズム」の話と照らし合わせて聞くことで、よりリアリティを持って受け止めていただけたのではないかと思います。また、認知症高齢者の音声コミュニケーション能力については、ごく最近得られた実験の結果をご紹介させていただきました。認知症の患者さんとのご自身の関わりと比べていかがだったでしょうか?

 人は誰しも老いを迎えます。老いに伴って徐々に音声を喪失していくことを避けることはできませんが、その仕組みを予め科学的に理解しておくことが、いざというときの冷静な対応につながるのではないかと考えます。

 当日は参加者から多くの質問が寄せられ、終了後も熱心にコメントを下さる方々がいらっしゃるなど、話題提供者としては、大変ありがたい機会となりました。この場を借りて御礼申し上げます。


中村 篤(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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