開催報告(第120回)

第2の地球を探せ!
〜宇宙に生命を探す科学〜

講師 : 田村 元秀 氏(東京大学大学院理学系研究科・教授 / 専門:赤外線天文学,アストロバイオロジー)
日時 : 2017年05月19日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


第120回のサイエンスカフェは、5月19日(金)に7th Cafeで開催されました。今回は、「第2の地球を探せ!〜宇宙に生命を探す科学〜」というタイトルで、系外惑星探査の最前線についての話題でした。話題提供者は、東京大学大学院理学系研究科教授で自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター長でもある田村元秀氏です。会場は、参加者が50名を超え大変盛況でした。

お話は太陽のような星(恒星)が宇宙全体や銀河系全体でどれくらい存在するのかということから始まり、太陽系の概要がまず説明されました。生命の起源や進化を調べるのに調査対象が地球だけだと考古学的な手法とならざるを得ないが、様々な年齢や異なった環境の系外惑星(第二の地球)を調べることにより考古学的手法に依らずに生命の起源や進化の問題に迫ることができる可能性についてのお話がありました。1995年に初めて検出されて以来、様々に観測手法により既に約4000個もの系外惑星が発見されているそうですが、発見された系外太陽系の様子は我が太陽系と随分異なっているものが多いそうです。

次に、系外惑星の探査の歴史と探査(検出)方法が紹介されました。遠方の系外惑星を直接イメージングで捉えるのは主星(恒星)が非常に明るいため難しく、望遠鏡と検出器(カメラ)だけでなくコロナグラフ・補償光学装置などの特殊な装置が用いられるそうです。しかしながら、直接イメージングによる発見数はまだ少なく、惑星の公転による主星のふらつきを分光スペクトで捉える方法(ドップラー法)や惑星が主星前面を横切るときの食現象を捉える方法(トランジット法)により多数の系外惑星が検出されています。とりわけ、ケプラー衛星は大気の揺らぎのない宇宙からのトランジット法により系外惑星の大半を発見しています。発見されている惑星の多くは地球とほぼ同じか少し重い系外惑星(スーパーアース)やもう少し質量が大きい海王星型のもので、初期に多く発見された質量の大きな木星型の系外惑星は比較的数が少ないとのことでした。また、これら多数の発見例は、ほぼ全ての恒星に惑星が存在し、宇宙には地球と同じような系外惑星が数多く存在する可能性を示しているそうです。

続いて、すばる望遠鏡(口径8.2m)による直接イメージングによる木星型の系外惑星の検出例が示された後に、生命が存在する可能性がある系外惑星を見つけるには、宇宙で存在量が2番目に多い分子である“水”が凍ったり蒸発したりしないで液体で存在できる恒星からの距離にある惑星(ハビタルゾーンの惑星)を探すことが重要というお話がされました。特に、太陽より軽くて温度の低い恒星は、存在数が多いだけでなく寿命も長く、そこに存在する系外惑星の検出もし易いことから注目されていることや実際に複数の惑星を持つ軽い恒星の例も報告されていることが紹介されました。さらに、太陽系に最も近い恒星で質量が軽い赤色矮星であるプロキシマ・ケンタウリのハビタブルゾーンに系外惑星がつい最近に発見され、生命が存在する可能性からたいへん注目されていることも話されました。

アストロバイオロジーセンターでは、すばる望遠鏡を用いて赤外線波長でのドップラー法により軽くて低温の恒星(赤色矮星)の周りに地球型の系外惑星を探し、次世代の大型望遠鏡(口径30mのTMT)で直接撮像や分光で生命が存在する証拠を探りたいと話されていました。


杉谷 光司(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

[戻る]