開催報告(第129回)

「人工知能」の過去・現在・未来

講師:渡邊 裕司 氏(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科・准教授 / 専門:知能情報学、情報セキュリティ)
日時 : 2018年3月16日(金)
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

今の人工知能で何でもできるのか?将来人工知能が人間の仕事を奪うのか?など最近何かと話題の人工知能(Artificial Intelligence: AI)について、人工知能が命名された1965年からの過去、現在、そして未来について話題を提供させていただきました。

まず、AIに関する写真、イラスト、動画、最新記事などを挙げて今のAIブームを示すことから始めました。AIブームは三度あり、今回は三つの要因「インターネット普及によるビックデータの収集可能」「コンピュータの高性能化やクラウド化」「ディープラーニング(深層学習)などAI研究の進展」によるものであると話しました。得体の知れないAI研究でいったいどんな手法が使われているかを知ってもらうために、話しの前半では過去から続く明示的な知識表現と探索について、後半では第三次ブームの火付け役であるディープラーニングも含めて機械学習について説明しました。

話しの前半では、まずAI研究の概要として、二つの研究立場(強いAIと弱いAI)、AI研究の歴史、AIの話題「チューリングテスト」と「フレーム問題」を紹介しました。やや哲学的で堅苦しい話題から、より身近なパズル「数独」をAIの探索手法で解くコンピュータプログラムを実演しました。このようにAIで問題を解くためには、まず問題をコンピュータで扱えるように知識表現が必要であり、ハノイの塔という簡単な例題を用いて、問題を状態・オペレータ・目標検査・経路コストの構成要素に分けることを解説しました。そして、表現された問題の解を探索する基本的な方法として、深さ優先探索、幅優先探索、深さ制限探索を説明しました。将棋や囲碁などのゲームも基本的にはゲーム木として表現し、Min-Max探索法により最善手を探索することを述べました。

話しの後半では、まず機械学習のAI研究での位置づけや古典的AIとの相違を示し、比較的分りやすい決定木学習について具体例で説明しました。そして、ディープラーニングのベースとなる脳神経系を模倣したニューラルネットワークを解説しました。ニューラルネットワークが複雑なパターンを分類できる様子をデモサイト上で実感してもらいました。このニューラルネットワークを多層構造にしたものがディープラーニングであり、特徴量を自動で発見可能であることを話しました。2012年にディープラーニングのブームが始まり、スマートスピーカー、会話ボット、自動運転車、医用画像診断などへの応用が急速に広がりつつあることを示しました。

年度末のご多忙の中にも関わらず50名弱の方にご参加いただきました。話の途中や終了後に多くの方から質問やアイデアをいただき、AI研究への興味と今後の発展に期待していると実感しました。具体例を多用して分りやすさを心がけたものの、専門的で難解と思われた方もみえたようです。私のお話の仕事がAIに奪われないように、内容が盛りだくさんであったことも含めて話す内容を今後も改善し続けたいです。


渡邊 裕司(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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