開催報告(第133回)

量子の世界の不思議

講師:徳光 昭夫 氏(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科・准教授 / 専門:物性理論)
日時 : 2018年7月20日(金)
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

量子力学は半導体をはじめとして日常生活のいたるところに使われています。それにも関わらず、その原理的な解釈には、日常の経験に基づく感覚とは相いれない部分があり、物理学者を長年悩ませてきました。近年、実験技術の発展により、その解釈が正しいかどうかを判別することができるようになりました。今回は、量子論の原理である「測定と状態の重ね合わせ」にかかわる実験をいくつか紹介しました。

量子的対象の不思議さは、一つの対象が、ある場合には波的にふるまい、ある場合には粒子的にふるまうという、2つの側面を併せ持つということにあります。光は古典的には波ですが、光を弱くしていくと粒子的側面が見えます。この粒子を光子といいます。

波は広がった対象ですが、その特徴はある波と別の波が重ね合うことができることです。波は対象の状態を表すので、測定をしていない時は「状態の重ね合わせ」が起きます。一方、粒子は、測定すると「ある」「なし」が区別できます。

今回は、光が波的な性質を持つことを明らかにしたヤングの古典的実験に対して、光子を一つ一つ数える観測に波の特徴である干渉効果が現れる現代的実験として、(1)マッハ・ツェンダー干渉計を利用した爆弾検査、(2)2か所の光源からでる2光子が、どちらから出たかを後から判断するヤングの実験の現代版、(3)古典的な波としても理解できるマッハ・ツェンダー干渉計の実験に、経路の途中で2光子を発生させて干渉を見る実験、を紹介しました。

いずれの実験も、人間が対象を測定したかしないかで結果が異なるという、素朴な物理観から言えばありえない結論を導きます。物理学者でも日ごろから頭を悩ませている話なので、科学に興味ある方々とはいえ、初めて聞く話に面食らったようでした。

話者の能力の限界から、「最新の科学をわかりやすく」というサイエンスカフェの趣旨に反し、説明がかなり難しいものとなりました。それでも最後まで熱心に聴講していただきました。終了後、自分なりの理解を確認される方や、量子コンピュータとの関係を質問される方など、科学へ強い興味をお持ちなのが印象的でした。


徳光 昭夫(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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