開催報告(特別企画)

東山動植物園自然動物館の動物たち:進化、保全、飼育

講師:
熊澤 慶伯 氏(名古屋市立大学教授 / 専門:動物進化学)
藤谷 武史 氏(名古屋市東山動物園 飼育第二係技能長)
日時 : 2018年8月14日(火)
会場 : 東山動植物園内・ガーデンテラス東山レストラン

今回は、名古屋市立大学システム自然科学研究科と東山動植物園とのコラボにより、東山動植物園の敷地の中でサイエンスカフェを行うという新しい試みに挑戦しました。東山動植物園には、両生爬虫類や夜行性哺乳類(小獣)を中心に飼育展示するユニークな自然動物館があります。ライオン舎やアジアゾウ舎などは本園の正門近くにあるので誰もが訪れると思いますが、自然動物館はスカイタワーに近い奥まったところにあり、迎えてくれる動物たちの愛想も控えめです。そこで今回はこの自然動物館に焦点を当て、自然動物館の動物たちの特徴・魅力を、様々な角度からお話しようと考えました。

まず熊澤から、数億年間に渡る脊椎動物の進化の歴史を踏まえて、爬虫類の特徴についてお話しました。爬虫類には1万種を超える現生種が知られており、ヒトには真似できない特殊な能力を獲得した種も多く含まれます。とりわけリクガメ類やムカシトカゲ類などが持つ100年を軽く超える長寿命は注目に値します。この長寿命の背景にはエネルギー節約型のライフスタイルがあると考えられており、爬虫類の長寿命はヒトの老化の研究にもヒントを与えてくれるのではないかとのメッセージをお伝えしました。また最後には、一般にあまり知られていない夜行性哺乳類をいくつか紹介し、自然動物館は哺乳類における収れん進化を学ぶよい場所であるということもお話しました。共同演者の藤谷氏は、自然動物館で現役の飼育員を務めている方です。藤谷氏は、飼育動物の生き生きとした写真とともに、非常に臨場感ある話を語ってくれました。ヤドクガエルのオスがオタマジャクシを背中に乗せて水場まで運ぶ話、名古屋市で絶滅しかかっているサンショウウオやカエルを動物園内で繁殖させる話、など熱っぽく語ってくれました。

今回のカフェは夏休みの最中であったこともあり、9名もの中高生が参加して下さいました。カフェ終了後には、ナイトズーを利用して午後8時半まで動物園内を散策することができ、自然動物館を訪問された方も恐らくおられたことと思います。カフェ会場であるガーデンテラス東山レストランは大変素晴らしく、サイエンスカフェを行う環境としては、これ以上を望めないと思える中で、特別企画のサイエンスカフェを実施できたことは大変幸いでした。ガーデンテラス東山さんの暖かい御協力に、御礼申し上げます。また暑い中参加され熱心に話を聞いて下さった参加者の皆様にも御礼申し上げます。


熊澤 慶伯(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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