開催報告(第136回)

スマホの中の結晶の役割と性質

講師:青柳 忍 氏(名古屋市立大学准教授 / 専門:構造物性物理学)
日時 : 2018年10月19日(金)
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

スマートフォン(スマホ)は、ポケットサイズでありながら、電話、メール、インターネット、SNS、カメラなど、極めて多彩な機能を有します。日本国内のスマホの世帯保有率は現在70 %を超えており、いまやスマホは現代人にとって生活必需品と言えるでしょう。スマホの小型化と高機能化には、その中に入っている微小な結晶素子の存在が欠かせません。今回のサイエンスカフェでは、それらスマホの動作を支えるいくつかの結晶素子の役割と性質について紹介しました。

スマホに限らずパソコン、タブレットなど、電子計算機の心臓部である中央処理装置(CPU)は、シリコンの結晶を用いて作られています。シリコンは地殻の主成分であり、鉱物として地球上に豊富に産出する元素です。シリコンの結晶は、原子1個あたり4個の価電子を持つ真正半導体です。シリコンの結晶にホウ素などの3個の価電子を持つ元素を少量混ぜると、価電子数の減ったp型半導体になります。リンなどの5個の価電子を持つ元素を少量混ぜると、価電子数の増えたn型半導体になります。p型、n型のシリコン結晶を接合することで、ダイオードや太陽電池、トランジスタを作ることができます。そして、シリコンの結晶表面にトランジスタを多数作製し配線することで、集積回路やCPUを作ることができます。1961年にNoyceによって作られた初期の集積回路では、直径1.5 mmのシリコンの結晶表面に4個のトランジスタが搭載されていました。現在作られている最新のCPUでは、1辺数mmのシリコンの結晶表面に数億個ものトランジスタが搭載されています。シリコンの結晶は、CPU以外にも、メモリや撮像素子などにも使われています。

以上のようなシリコンに関する話題を中心に紹介しましたが、その他にも、液晶ディスプレイのバックライトに使われる半導体結晶と蛍光体結晶、積層セラミックコンデンサーに使われる強誘電体結晶、振動子や表面弾性波(SAW)フィルターに使われる圧電体結晶についても紹介しました。昨今のスマホ保有率の高さを反映してか、今回は年齢・性別を問わず比較的幅広い層の方たちにご参加して頂けたように感じます。説明の不十分な箇所もあったかと思いますが、最後まで集中して聞いてくださった参加者の皆様に深くお礼を申し上げます。


青柳 忍(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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