開催報告(第138回)

ウイルスの不思議

講師:鈴木 善幸 氏(名古屋市立大学教授 / 専門:生命情報学,分子進化学,集団遺伝学,ウイルス学)
日時 : 2018年12月21日(金)
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

今回のサイエンスカフェでは、ウイルスにまつわる話をさせていただきました。

まず、ウイルスとはどういう生き物かということで、これまでに約5000種が同定されていること、ヒトを本州の大きさとするとウイルスはテニスボールほどの大きさだということ、いろいろなウイルスがヒトに感染して病気の原因となりうるがヒトの体の中では免疫が働いてウイルスやウイルスに感染した細胞を排除していることなどを紹介しました。なぜインフルエンザウイルスのワクチンは毎年うたなければいけないのにポリオウイルスのワクチンは生後数回うつだけでいいのかふしぎです。

つぎに、インフルエンザウイルスはどういう生き物かということで、インフルエンザA型ウイルスのゲノムは8分割されていること、水禽が自然宿主であること、パンデミックでは遺伝子再集合が重要で年次流行では突然変異が重要であること、表面タンパク質であるヘマグルチニンは受容体であるシアル酸に結合するがノイラミニダーゼはそれらの結合を切断することなどを紹介しました。なぜインフルエンザA型ウイルスはヘマグルチニンとノイラミニダーゼという相反する機能を持ったタンパク質を必要としているのかふしぎです。

また、トリインフルエンザウイルスはヒト-ヒト感染するようになるのかということで、ヒトインフルエンザウイルスとトリインフルエンザウイルスは結合できる受容体が異なること、増殖するための至適温度が異なること、わりと少数のアミノ酸の変異がおこるだけでトリインフルエンザウイルスはヒト-ヒト感染できるようになると考えられること、それらの変異は自然界でも観察されることなどを紹介しました。なぜトリインフルエンザウイルスのパンデミックがそう間単におこらないのかふしぎです。

そして、分節型ウイルスはどのようにゲノム分節をパッケージングしているのかということで、インフルエンザウイルスやロタウイルスといった高度分節型ウイルスでは各ウイルス粒子に全種類のゲノム分節が1コピーずつ格納されていると考えられること、ゲノム分節の選択的パッケージングにはRNA-RNA間での塩基配列の相補性を介した直接的な相互作用が関与していると考えられることなどを紹介しました。相互作用すると考えられる塩基配列対はなぜウイルス株間で保存されていないのかふしぎです。

参加者の皆様には熱心に話を聴いていただき、興味深い質問をたくさんいただきました。心より感謝申し上げます。


鈴木 善幸(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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