開催報告(第139回)

細菌が地球大気に影響を与えるって?!

講師:櫻井 宣彦 氏(名古屋市立大学准教授 / 専門:生物無機化学、生体エネルギー学、構造生物化学)
日時 : 2019年1月18日(金)
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

今回のサイエンスカフェでは,地球の大気への微生物の関わりを通して,生命の歴史や地球温暖化について考えてみました。話の展開のため,話題を1. 地球大気の歴史と微生物との共進化~生命の起源~と,2. 地球温暖化と脱窒の2部にわけ,ご紹介をさせていただきました。

第1部では地球史46億年を大気成分の変化とともに追ってみました。その中で,化学進化の歴史や,始原生物の候補,そして共通祖先(Last Universal Common Ancestor : LUCA)について考えてみました。また,マーグリスの共生起源説について説明を行い,簡単ながら,全球凍結時代の始まりに関わる細菌や全球凍結後に始まる多細胞動物の増殖に関わる光合成微生物の関わりについてお話をさせていただきました。さらに,アレニウスによって提唱されたパンスペルミア説をご紹介させていただき,地球外生物,特に太陽系の惑星における,生命存在の可能性についてご紹介をさせていただきました。

第2部では温室効果ガスの分子構造や実際の人工衛星から測定された赤外吸収の様子から大気中のどの分子種が地球の温室効果に関わっているかを考えてみました。そして,温室効果ガスのなかから亜酸化窒素(N2O)に着目し,その発生に関わる細菌として脱窒菌が考えられていることを紹介しました。また,その発生機構を考えるために,脱窒に関わる酵素群の局在箇所をしめし,亜酸化窒素がいかに発生するかを紹介し,さらに何がわかっていないかを説明させていただきました。最後にヒトの体に住みつく微生物の数とヒトの細胞数の比較や,地球上の総バイオマス量としての微生物を知ってもらい,毛嫌いされている微生物の重要性を認識してもらいました。

皆様の興味が尽きないように,話題を広範囲にとり,クイズや動画を取り混ぜ,構成させていただきました。いかに感じられたか,心配な部分もありますが,皆様からの質問内容を鑑みますと,サイエンスカフェに来られる方々も,名市大のサイエンスカフェ史のなかで,知識が肥え,進化しているな~と考えさせられました。半分程度は研究対象外の薄い知識で,皆様の疑問に答えられなかった質問もありました。次回のサイエンスカフェまでの課題とさせて下さい。


櫻井 宣彦(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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