開催報告(第143回)

元素化学:化学と元素と周期表の話

講師:笹森 貴裕 氏(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科・教授 / 専門:有機化学、有機元素化学、有機金属化学)
日時 : 2019年6月21日(金)
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

「化学」は自然科学の中で、「ものつくり」の役割を担っています。難しそうに思えるかもしれませんが、実は私達の生活に密着した学問です。生活のなかの様々な場面で、わたしたちは化学を利用しています。生活を豊にする「機能」をもった物質を創り出すための学問が「機能化学」と呼ばれています。原子の種類をあらわす「元素」の一覧表である「元素周期表」は物質を生み出すためのバイブルとも言える存在です。

紀元前はるか昔から、わたしたち人類は、「すべての”もの”は、”なにか”の組み合わせでできている」と考えて、その”根源的なもの”、つまり”元素“を追い求めていました。今では、全てのモノは「原子」のつながりでできていて、その原子の構造も大凡想像ができるようになってきました。しかし、それはほんの数百年前にできあがった考え方です。それ以前の人々は、”元素”というものをどのように考えて、どのように追い求めていったのでしょうか。

今回のサイエンスカフェでは、「周期表」がメンデレーエフによって1869年に発表されてから、わが国が誇る「113番元素ニホニウム」を含む118番までの4元素が2016年に確定して、周期表の第7周期までの元素が完成するまで、多くの学者の血と汗と涙で創り上げた「元素周期表」の歴史を振り返りました。

また、生活に密着した化学の恩恵を実感していただきたく思い、「一家に一枚周期表」にみられる、我が国の化学力、科学技術の進歩についていくつか解説させていただきました。 同時に、現在の「元素資源」の枯渇、という問題を解説し、これを解決するために、私たちのグループが取り組んでいる研究課題について少し紹介させていただきました。

今年は、メンデレーエフの周期表発見からちょうど150周年にあたるため、UNESCOによって国際周期表年(International Year of the Periodic Table of Chemical Elements: IYPT)と宣言されました。特に我が国初、アジア初の113番元素の存在を通じて、「未知への挑戦」が科学技術の進歩と人類のさらなる発展のために必要不可欠であることを実感していただければ幸いです。

 今回のサイエンスカフェが、我が国の研究者への尊敬と誇りをもって、理学・自然科学への憧れを抱くきっかけとなることを祈りつつ、IYPT2019をみなさまと一緒に祝うことができれば幸いです。

 猛暑のなか、多くの方々にお越しいただき、化学四方山話にお付き合いいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

笹森 貴裕(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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