開催報告(特別企画)

名古屋市立大学 × 名古屋市科学館
サイエンスパートナーシップイベント
中学生・高校生を対象とした「サイエンスカフェ in 名古屋」

元素周期表ができるまで

講師:笹森 貴裕
(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科・総合生命理学部・教授 / 専門:有機元素化学)

日本最大の元素周期表展示

講師:山田 厚輔
(名古屋市科学館・学芸員 / 専門:化学)

日時 : 2019年7月14日(日)
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

今回の中高生向けサイエンスカフェ『元素周期表ができるまで・日本最大の元素周期表展示』では、名古屋市科学館・学芸員の山田厚輔さんとタッグを組んで、中学生・高校生に周期表の魅力を伝えたい、という思いをこめて、お話しさせていただきました。

紀元前はるか昔から、わたしたち人類は、「すべての”もの”は、”なにか”の組み合わせでできている」と考えて、その”根源的なもの”、つまり”元素“を追い求めていました。今では、全てのモノは「原子」のつながりでできていて、その原子の構造も大凡想像ができるようになってきました。しかし、それはほんの数百年前にできあがった考え方です。それ以前の人々は、”元素”というものをどのように考えて、どのように追い求めていったのでしょうか。

最初の講演者である笹森が、化学のバイブルとも言える「周期表」ができるまでの歴史を振り返りました。メンデレーエフによって1869年に発表されてから、わが国が誇る「113番元素ニホニウム」を含む118番までの4元素が2016年に確定して、周期表の第7周期までの元素が完成するまで、多くの学者の血と汗と涙で創り上げた「元素周期表」の歴史には、沢山のドラマがあります。生活に密着した化学の恩恵を実感していただきたく思い、「一家に一枚周期表」にみられる、我が国の化学力、科学技術の進歩についていくつか解説させていただきました。同時に、現在の「元素資源」の枯渇、という問題を解説し、これを解決するために、名市大・笹森グループが取り組んでいる研究課題について少し紹介させていただきました。

次に、名古屋市科学館の山田厚輔さんが、名古屋市科学館に常設されている「日本最大級の元素周期表」をはじめ、日本の科学館の各地に展示されている周期表を紹介して下さいました。周期表展示にこめた想い、裏話などを交えて紹介して下さり、科学館での周期表の楽しみ方、を伝授してくださいました。

今年は、メンデレーエフの周期表発見からちょうど150周年にあたり、UNESCOによって国際周期表年(International Year of the Periodic Table of Chemical Elements: IYPT)と宣言されました。特に我が国初、アジア初の113番元素の存在を通じて、「未知への挑戦」が科学技術の進歩と人類のさらなる発展のために必要不可欠であることを、次世代を担う中高生のみなさんに実感していただければ幸いです。名古屋市立大学・名古屋市科学館のタッグで、周期表の歴史と周期表の楽しみ方をお伝えさせていただきました今回のサイエンスカフェが、我が国の研究者への尊敬と誇りをもって、理学・自然科学への憧れを抱くきっかけとなることを祈りつつ、IYPT2019(https://iypt.jp/)をみなさまと一緒に祝うことができれば幸いです。

猛暑のなか、多くの方々にお越しいただきましたこと、心より感謝申し上げます。


笹森 貴裕(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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